ゲート・明治維新・趣都

電気街から萌え街へ、萌え街からおなじみのありふれた繁華街へ。日々変貌しつつある秋葉原を見ていて、かつての電気街に郷愁を覚えないと言っては嘘になる。アニメ美少女が発散させる萌え成分をもっと抑制した電気街、チェーンの系列傘下にある飲食店の進出…

イカ娘・ラヴクラフト・心身問題

タイトルに「侵略」の文字があるように、安部真弘『侵略!イカ娘』のそもそもの発端は海を汚す人類に対するイカちゃんによる報復にあったわけである。だがそんな設定はすぐ脇に置かれ、万年常夏のギャグ漫画が繰り広げられる。人気の秘訣には、イカというこ…

甲賀・芋虫・悪女

少年向けバトル・マンガの基本フォーマットともいえるチーム戦方式を創作の世界に採用したことで知られる、山田風太郎『甲賀忍法帖』。甲賀・伊賀双方から10人ずつ選ばれた忍者たちが激突し、相手を皆殺しにするまで戦いが止むことはない。全員が人間離れし…

ブライトン・けいおん・エコール

海浜保養地として名高いイギリスのブライトン。そこではブライトン・ロックというスティックキャンディが売られている。ロックといっても音楽とは関係がない。日本の金太郎飴と同じで、どこを切っても「ブライトン・ロック」の文字があらわれる。これを「三…

天気の子・ラピュタ・北斗

映画の内容には一切触れない、もしくは予告編から知り得る範囲で。 映画『天気の子』を観ていて、そういえば日本神話に「雲の神」っていたかな、と。調べてみたら豊雲野神(トヨクモノノカミ)というのがいることにはいた。とくだんエピソードがある神さまで…

まーけっと・餅・いなこん

京都アニメーションのオリジナル・アニメ『たまこまーけっと』のヒロイン・北白川たまこの家は「たまや」という屋号の餅屋。そのことを矜持としている彼女は、四六時中、新商品となる餅のアイディア作りに余念がない。「たまや」は京都・出町柳近くの枡形商…

見えそうで見えない-鷲田清一『「待つ」ということ』より

意識をひきつらせる。これが、誘導と誘惑のもっとも効果的な手段である。そして意識をひきつらせるには、怖いもの、おぞましいもの、禁じられたもの、つまり、見てはいけないものを見ることの可能性だけを見せるのが、もっとも効果的な方法だ。(鷲田清一『…

よそ者は過去をもたない-福元一義『手塚先生、締め切り過ぎてます!』より

先生のエッセイ『ガラスの地球を救え』(光文社)の中に、「めげそうになるたびに、いわゆる “主流” というようなものに敵愾心を抱いて、コンチクショウと思ってやってきたのです」という一節がありましたが、あの飽くなき「コンチクショウ」精神が、『グリ…

籠の鳥

わたしたちは政府に逆らってるつもりなんてないのよ軍がそう決めつけてるだけ鳥が籠に入れられれば毎日大空を夢見るものでしょう?ティプトリーTVアニメ『エウレカセブン』(2005年)第8話 TVシリーズ 交響詩篇エウレカセブン Blu-ray BOX2 (特装限定版) 出…

二重の自己意識-木村敏『あいだ』より

ひとが現在というこの瞬間において何かをするとき、それは車を運転することでも、本を読むことでも、仕事で取引先と話すことでも構わないが、これまでにしてきたことが今するべきことを決め、かつこれから先の方針を拘束していく。 分かりやすく説明するため…

知識からの断絶

悪魔のごとき白人は、奴隷とした黒人をもともとの種族についてのあらゆる知識から切り離した。もともとの言語も宗教も文化も、すべての知識から断絶しさせられた黒人は、ついには、自らの真のアイデンティティについてのいかなる知識も持たない、この地上に…

SNSは才能を浪費する-升田幸三『勝負』より

刹那的な遊びごとの好きな人には、金銭ばかりじゃなしに、才能まで浪費する人が多い。 その逆が、貯金をする人です。 なにも銀行屋の宣伝をする気はないが、貯金できる人というのは忍耐力があるし、金銭以外のものも、蓄積する精神があります。(升田幸三『…

不完全ゆえに吾あり-岡倉覚三『茶の本』より

茶道の要義は「不完全なもの」を崇拝するにある。(岡倉覚三『茶の本』改版(岩波文庫、1961年)) 不完全とは、缺けていることだ。そこが盈ちれば、不完全は完全となろう。ただ、もはやそれ以上に付け足すことはできなくなる。それ以上は蛇足となってしまう…

より良き自分を探し求めて

Where must we go... we who wander this Wastelandin search of our better selves? The First History Man どこへ向かうべきか、 この荒野を彷徨する者がより良き自分を見つけるために? 最初の歴史家 映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年…

外部をもたぬ世界の息苦しさ-柞刈湯葉『横浜駅SF 全国版』より

自己増殖を続ける横浜駅が本州を覆い尽くしてから、既に五〇年が経過していた。駅構造は幅の広い津軽海峡を渡ることはできないため、上陸阻止のためにはこの青函トンネルの出口さえ封鎖すれば良い。(柞刈湯葉『横浜駅SF 全国版』) やらかした。わたしが読…

八九寺真宵の大切なお名前-稲田浩二編『日本の昔話』より

化物が出るという荒れ寺にひとりの和尚が泊まる。すると夜更け、村人たちから警告されていた通り、もろもろの魑魅魍魎が名乗りをあげ、和尚の前に姿をあらわす。そこで和尚は彼らの正体をひとりひとり暴き出してみせる。 「東林の馬頭とはな、この東にあって…

姿なき神々が現人神になる-安丸良夫『神々の明治維新』より

薩長倒幕派は、幼い天使を擁して政権を壟断するものと非難されており、この非難に対抗して新政権の権威を確立するためには、天皇の神権的絶対性がなによりも強調されねばならなかったが、国体神学にわりあてられたのは、その理論的根拠づけであった。(安丸…

参照点能力と光の弱い星-西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』より

ラネカーは、人間には参照点能力というものが備わっていて、メトニミーをその能力の現われだと考えるんですね。たとえば、遠くにいる猫を見ていて、隣にいる人にその猫を見てほしいと思ったときに、直接は見つけにくいので、猫の横の木を指して「あそこに大…

共産主義の捜査を垣間見る-トム・ロブ・スミス『チャイルド44』より

トム・ロブ・スミス『チャイルド44』がことのほか面白い(ただしまだ上巻)。おそらくアンドレイ・チカチーロによる児童連続殺人事件を題材にしているのだろう。しかし面白いのはそちらの主旋律となる事件ではなく、ソ連共産党内における犯罪捜査の実態らし…

消える言葉、増えるコトバ-川島隆太・安達忠夫『脳と音読』より

論理的思考力や情緒力の源泉は、なんといっても国語力、すなわち「ことばの力」です。(川島隆太・安達忠夫『脳と音読』) ある民族にとっての国語とは、彼らを取り巻く世界の引き写しである。山岳地帯に暮らす人びとは海に関する語彙をもたないだろうし、砂…

ひとは育たず

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。山本五十六

おそわりそだつ-岡潔『春宵十話』より

浪人中の学生で、大学に入ったら月に一ぺん論文を書くから私に直してほしいというのもあった。いまの学生で目につくことは、非常におごりたかぶっているということである。もう少し頭が低くならなければ人のいうことはわかるまいと思う。謙虚でなければ自分…

述語による同一性-春日武彦『精神医学事典』より

カウンセリングとは、カウンセラー(や精神科医)がクライアントを励ましたり気の利いたアドバイスを与えることではない。重要なのは言語化というプロセスである。(春日武彦『精神医学事典』(河出書房新社、2017年) 共産党は赤い、共産党はスターリン、共…

すり替わる主観と客観-西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』より

つまり、「太郎が花子に話しかけた」と「太郎が花子に話しかけてきた」は客観的には同じ事実でありうるのだけれども、しかし、意味は異なっている。だから、その意味の違いは客観主義ではなくて、主体がものごとをどう捉えているか、つまりわれわれの認知の…

感情を煽る理性-岡潔『春宵十話』より

理性的な世界は自他の対立している世界で、これに対して宗教的な世界は自他対立のない世界といえる。自他対立の世界では、生きるに生きられず死ぬに死ねないといった悲しみはどうしてもなくならない。自と他が同一になったところで初めて悲しみが解消するの…

わたしにとっておもしろい-梅棹忠夫『知的生産の技術』より

わたしの場合をいうと、じつはカードにメモやらかきぬきやらをするのは、全部第二の文脈においてなのである。つまり、わたしにとって「おもしろい」ことがらだけであって、著者にとって「だいじな」ところは、いっさいかかない。(梅棹忠夫『知的生産の技術…

端を守る香車-升田幸三『勝負』より

香車というのは端を守っとるです駒です。未熟な人はあまり動かすことをしないけど、いわば辺鄙なところで、灯台守りをしとるような駒だな。ま、北海道の北の先とか、鹿児島県の奄美大島とかで……。 あれがおってくれるおかげで、中央でも安心しておれる。あれ…

学者が全体主義を牽引する-竹内洋『革新幻想の戦後史』より

私が言いたいのは、作家や学者や教授や文献学者を超人の域にまで高めようとする思い上がりである。もちろん私も知的能力を軽蔑するわけではない。しかし、そうしたものには相対的な価値しかないのだ。私としては、意志の力や性格の強さや判断のたしかさや実…

生きているから間違える-ダニエル・ドレズナー『ゾンビ襲来』より

権威主義国家は、国民の健康に関する危機の存在を認めることが、当該社会に対する国家統制の脅威となることを理由として、しばしば、そのような危機の存在そのものを認めない。非民主主義的レジームは、災害を予防し封じ込めるために必要な公共財に投資を行…

ミエナイ世界-春日太一『天才 勝新太郎』より

勝は自宅に「合気道の創始者」という武道の達人を招き、教えを乞う。合気道は、相手の攻撃を受けて、その力を応用して倒す護身術。盲目のため、自ら先制攻撃することのできない座頭市に通じる精神があると勝は考えていた。 達人が勝に説いたのが、「恐怖を感…