米澤穂信『インシテミル』(文春文庫、2010年)

インシテミル (文春文庫)

モニターの一人は、電話で誘いを受けた。ちょうど、金が欲しいところだった。細かい条件など、検討どころか、聞くことさえもしなかった。気にしたのは、いつ始まるのか。いつ終わるのか。入金はいつなのか。その人物は、何でもするつもりで応募した。

(原文は2014年執筆)
7・12・112000。
物語を読み進めるのに必要な世界観なりルールなりが、のっけからこまごまと説明される作品がたまにある。「この館には部屋が全部で20室あり、夜の12時から朝の6時までは玄関に鍵がかけられるので完全な密室。部屋から食堂へ行くには、必ずホールを通らなければならず……うんたらかんたら」というようなやつ。
 
アイディアが極度に先行すると、こんなことになるのだろう。だから『DEATH NOTE』も最初の数話で読むのをやめてしまった(いずれ再挑戦しようとは思っているが)。テレビゲームでも見ているかのよう。「設定」という本来読者に意識させてはならないものが前景化されてしまい、物語に入り込めない。
 
残念ながら本書もその轍を踏んでしまっている。ミステリー作家の米澤先生には大変失礼ながら、もうここまでの話なら、ミステリーではなくいっそホラーにしてしまってもいいように感じた。クローズド・サークルであることは分かるが、時期的に映画『ソウ』の影響もあったのかと、わたしの頭のなかをノイズが飛び交う。
 

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)