ブライトン・けいおん・エコール

海浜保養地として名高いイギリスのブライトン。そこではブライトン・ロックというスティックキャンディが売られている。ロックといっても音楽とは関係がない。日本の金太郎飴と同じで、どこを切っても「ブライトン・ロック」の文字があらわれる。これを「三つ子の魂百まで」のメタファーとして用いた小説がある。グレアム・グリーンの『ブライトン・ロック』だ。殺人に手を染めた少年がアリバイをでっち上げ、逃げ切りを目論む。ところがそのカラクリを少女が目撃していた。少年は彼女の口を塞ぐために偽りの結婚にまで踏み切る。何が「三つ子の魂百まで」なのかは実際に読んでもらうとして、非常に後味の悪い読後感とも言えるし、人生の真理を達観していると解釈することもできる。どのように読み解くかは読者次第。
 
そんなブライトンから1時間ほどの場所に、垂直に切り立った崖の白さが目に眩しい景勝地セブン・シスターズがある。『映画けいおん!』のエンドロールでは、その崖上に広がる緑の台地を放課後ティータイムの少女たちが風に逆らって走る。正真正銘シリーズ最後の新曲となった「Singing!」、楽器の音がひとつずつ積み重なっていくイントロのカッティングが心地よい。ブライトンの町を背景にしたカットも途中々々に差し挟まれる。
 
Singing!」ではさらに、襟ぐりの深い水色のワンピースと胸元を飾る白いリボン、そんなロリータファッションに身を包み、少女たちが秘密の花園に舞う。「秘密」は「禁断」とも置き換えられよう。赤いラインの入ったハイソックスとスニーカーは清潔さをまたぎこし、性的イノセンスと同性愛的ピュリティという両義性にまで深入りする。澪・唯・梓が三つ編みに結い、律が前髪をおろし、紬がリボンで束ねた髪形もあどけない。すべてにいつ崩れ去ってもおかしくないフラジャイルが漂う。こうした表現はルシール・アザリロヴィック監督の映画『エコール』にインスパイアされたもの。ドイツ文学者フランク・ヴェーデキント『ミネハハ』を原作とした作品である。

 

ブライトン・ロック (ハヤカワepi文庫―グレアム・グリーン・セレクション)

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映画 けいおん!  (Blu-ray 初回限定版)

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エコール(字幕版)

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