新井潤美選「執事・メイドを通してみる英国文化」三省堂書店神保町本店、2016年【29冊】

わたしにとってのメイドものといえば、森薫さんの『エマ』が真っ先に思い浮かびます。身分違いのふたりの恋という、言ってしまえばあまりにベタな素材をこうも面白く読ませてしまうのは、やはり作者の卓越したストーリーテリング力によるものでしょう。本編→外伝→本編というちょっと変わった構成の作品です。ヴィクトリア朝の残光を漂わせた最終回にたくさんのノスタルジーとちょっぴりの「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」を感じてしまったわたしです。その繊細な描き込みは、のちに『乙嫁語り』に引き継がれていきます。

新井先生の本

わたしはこうして執事になった

ジーナ・ハリソン『わたしはこうして執事になった新井雅代訳、白水社
華麗なる時代の最後の輝きの日々―執事には誰がどんな経験をへてなるのか。執事になった人なれなかった人、貴族の大邸宅や在米イギリス大使館に勤めた五人が語る、笑いと苦労、時に涙の職業人生。『おだまり、ローズ』の著者がおくる、男性使用人の世界。

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想

ジーナ・ハリソン『おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想新井雅代訳、白水社
笑いと感動で描く、お屋敷の内側、型破りな貴婦人と型破りなメイドの35年間。20世紀前半、「古き良きイギリス」最後の時代のお屋敷を内側から描いた、すぐれた一次史料であると同時に映画のようにドラマチックで感動的な半生記。

パブリック・スクール――イギリス的紳士・淑女のつくられかた (岩波新書)

新井雅代『パブリック・スクール――イギリス的紳士・淑女のつくられかた岩波書店岩波新書
歴代首相をはじめ著名人を輩出した、イートン、ハロウなどの寄宿制私立名門校パブリック・スクール。階級が根強く残るイギリス社会において、上流階級の子弟の教育機関でありながら、文化の一部として広く国民に共有されてきた。独自の慣習からスポーツ、同性愛まで、小説や映画などからそのイメージの成立と変遷をたどる。

執事とメイドの裏表 ─ イギリス文化における使用人のイメージ

新井雅代『執事とメイドの裏表 ─ イギリス文化における使用人のイメージ白水社
執事は二つの顔を持っている?メイドは玉の輿に乗れるのか?英国社会は歴史的に、使用人にどのようなイメージを持ってきたか、そしてその実像は?日本やアメリカで流布しているイメージとのギャップから英国文化を考える。

へそ曲がりの大英帝国 (平凡社新書430)

新井雅代『へそ曲がりの大英帝国平凡社平凡社新書
世界に名だたるイギリス人のシニシズムと皮肉好き。映画、小説、ミュージカル、コメディ、日本人にも馴染み深いもの多々あれど、「へそ曲がり」たちにはへそ曲がり流の親しみ方と愛し方がある!「大衆文化」から見る、あなたの知らないほんとうのイギリスの姿。

 

使用人が出てくる他の本

ヴィクトリアン・サーヴァント―階下の世界

パメラ・ホーン『ヴィクトリアン・サーヴァント―階下の世界』子安雅博訳、英宝社
ヴィクトリア時代、未曽有の繁栄を遂げた中流階級のリスペクタブルな生活を文字通り階下で支えた家事使用人たち。彼らの日々の営みを豊富な具体的資料を通して浮き彫りにする。

図説メイドと執事の文化誌

シャーン・エヴァンズ『図説メイドと執事の文化誌村上リコ訳、原書房
19世紀から20世紀初めにかけて、英国の大きな屋敷で働いた人々はどのような毎日を送っていたのだろう。本書は家令からフットマン、コックからハウスキーパー、ナースメイドまで、無名の人々の日常生活を、残された手紙や日記、帳簿、料理帳、ワインセラー帳、薬の調合ノート、あるいは「使用人規則」など膨大な資料から明らかにしてゆく。職務によってさまざまな役割を果たした家事使用人の専門技術、権限、季節の行事、服装、食事、採用、給料まで、邸宅内部のカラー写真とともに解説。「階下」の知られざる生活を今に示す。

使用人が見た英国の二〇世紀

ルーシー・レスブリッジ『使用人が見た英国の二〇世紀』堤けいこ訳、原書房
家庭を営み、ステータスを誇示するため、二〇世紀初頭の英国では、最貧困層を除くほとんどの階級、八〇万世帯が使用人を雇っていた。家事奉公人の仕事と制度を通して、家と社会の激動の時代をあざやかに描き出す。

 

ビジュアル本

図説 英国執事 新装版: 貴族をささえる執事の素顔 (ふくろうの本/世界の文化)

村上リコ図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔河出書房新社(ふくろうの本)
古き良き時代の、貴族と男性使用人たちの生活とは? 何を思い、どんな仕事をしていたの? 何時に起きて、給料はいくら? 出世の道は? 恋や結婚は? 御主人様や奥方様とのあやうい関係? ときには犯罪に走ることも……?

図説 英国メイドの日常 新装版 (ふくろうの本/世界の文化)

村上リコ図説 英国メイドの日常河出書房新社(ふくろうの本)
百年前の英国における、働く女子の最大多数派、「メイド」たちの素顔に迫る。絵画・挿絵・広告・絵葉書、そしてプライベート写真…。英国メイドの日常を描いた貴重な図版をぎっしり300点以上収録!

図説 英国貴族の暮らし (ふくろうの本)

田中亮三『図説 英国貴族の暮らし河出書房新社(ふくろうの本)
貴族の館・カントリー・ハウス、ロンドンでの社交シーズン―ジェントルマンとは何か?レイディーの暮らしは?執事、女中頭、クック、ハウスメイドなど―使用人たちの世界。チャーチル、故ダイアナ元妃の実家など名家を探訪。

 

使用人が出てくる文学

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

カズオ・イシグロ日の名残り土屋政雄訳、早川書房(ハヤカワepi文庫)
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。

ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻 (文春文庫)

P・Gウッドハウスジーヴズの事件簿―才智縦横の巻岩永正勝小山太一訳、文藝春秋(文春文庫)
20世紀初頭のロンドン。気はいいが少しおつむのゆるい金持ち青年バーティには、厄介事が盛りだくさん。親友ビンゴには浮かれた恋の片棒を担がされ、アガサ叔母は次々面倒な縁談を持ってくる。だがバーティには嫌みなほど優秀な執事がついていた。どんな難帯もそつなく解決する彼の名は、ジーヴズ。

ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻 (文春文庫)

P・Gウッドハウスジーヴズの事件簿―大胆不敵の巻岩永正勝小山太一訳、文藝春秋(文春文庫)
時は20世紀初頭。ロンドンのマンションの一室に、執事ジーヴズは今朝も流れるように紅茶を携えやってくる。村の牧師の長説教レースから実らぬ恋の相談まで、ご主人バーティの難題をややいじわるな脳細胞が華麗に解決(?)。

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

P・Gウッドハウス比類なきジーヴス森村たまき訳、国書刊行会
ぐうたらでダメ男の若旦那バーティーと、とんち男の召使いジーヴス。世界的に有名なこの名コンビと、オマヌケなビンゴやお節介屋のアガサ伯母さんたちが繰り広げる抱腹絶倒の人間喜劇。

ジェーン・エア(上) (新潮文庫)

シャーロット・ブロンテジェーン・エア』大久保康雄訳、新潮社(新潮文庫
孤児として、伯母に育てられたジェーンは、虐待され、ローウッド寄宿学校にいれられる。そこで八年を過した後、広告を出し家庭教師として赴いた先に居たのは子供と家政婦だけだった。散歩の途中助けた人物こそ、屋敷の主人ロチェスターであると知ったジェーンは、彼と名門の貴婦人とのロマンスを聞き、胸が騒ぐ。

嵐が丘(上) (岩波文庫)

シャーロット・ブロンテ嵐が丘』河島弘美訳、岩波書店岩波文庫
作者の故郷イギリス北部ヨークシャー州の荒涼たる自然を背景とした、二つの家族の三代にわたる愛憎の悲劇。主人公ヒースクリフの悪魔的な性格造形が圧倒的な迫力を持つ、ブロンテ姉妹のひとりエミリー(一八一八‐四八)の残した唯一の長篇。

風にのってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

P・L・トラヴァース『風にのってきたメアリー・ポピンズ』林容吉訳、岩波書店岩波少年文庫
東風の吹く日に、こうもり傘につかまって空からやってきたメアリー・ポピンズ。バンクス家で子どもたちの世話をすることになった彼女は、子どもたちを不思議な冒険の世界へと導き…。

帰ってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫 53)

P・L・トラヴァース『帰ってきたメアリー・ポピンズ』林容吉訳、岩波書店岩波少年文庫
メアリー・ポピンズが西風にのってバンクス家を去ってしまってから,子どもたちは彼女の帰ってくる日を心待ちにしていた.ある日,公園でタコあげをしていると,糸の先になつかしい彼女の姿が現れた.ふだんはきびしいナース(保母)のミス・ポピンズだが,彼女が語る物語は,子どもたちを不思議な冒険へとみちびいてゆく.

とびらをあけるメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

P・L・トラヴァース『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』林容吉訳、岩波書店岩波少年文庫
バンクス家の子どもたちが待ちに待っていたメアリー・ポピンズが、やっと帰ってきました。しかも、打ち上げ花火の星にのって! 子どもたちは、メアリー・ポピンズの不思議な魔法の世界に、すぐにでも、そしていつまでもひたっていたい気持ちでいっぱいです。さあ、マザーグースや神話の世界へ、楽しい冒険旅行のはじまりです。

公園のメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

P・L・トラヴァース『公園のメアリー・ポピンズ』林容吉訳、岩波書店岩波少年文庫
バンクス家の子どもたちが、メアリー・ポピンズといっしょに公園にあそびにゆくと、いつもふしぎな物語やできごとに出会います。一角獣があらわれて大騒動になる話など、6つの短編が楽しめる「メアリー・ポピンズ」シリーズの4冊目。

[第1巻 メロドラマ] パミラ、あるいは淑徳の報い (英国十八世紀文学叢書)

サミュエル・リチャードソン『パミラ、あるいは淑徳の報い』原田範行訳、研究社
情欲に満ちた若主人に誘惑され監禁されてしまった美しく無垢なメイド、パミラ。孤立無援のなかで貞操を守るための必死の駆け引きが始まる…。

女だけの町―クランフォード (岩波文庫 赤 266-1)

エリザベス・ギャスケル『女だけの町―クランフォード小池滋訳、岩波書店岩波文庫

月長石 (創元推理文庫 109-1)

ウィルキー・コリンズ月長石』中村能三訳、東京創元社創元推理文庫
インド寺院の宝〈月長石〉は数奇な運命の果て、イギリスに渡ってきた。しかし、その行くところ、常に無気味なインド人の影がつきまとう。そしてある晩、秘宝は持ち主の家から忽然と消失してしまった。警視庁のけんめいの捜査もむなしく、〈月長石〉のゆくえは杳として知れない。

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アガサ・クリスティオリエント急行の殺人山本やよい訳、早川書房(ハヤカワ文庫)
冬の欧州を走る豪華列車オリエント急行には、国籍も身分も様々な乗客が乗り込んでいた。奇妙な雰囲気に包まれたその車内で、いわくありげな老富豪が無残な刺殺体で発見される。偶然乗り合わせた名探偵ポアロが捜査に乗り出すが、すべての乗客には完璧なアリバイが……。

ロミオとジュリエット (白水Uブックス (10))

ウィリアム・シェイクスピアロミオとジュリエット小田島雄志訳、白水社

十二夜 (白水Uブックス (22))

ウィリアム・シェイクスピア十二夜小田島雄志訳、白水社

ハリー・ポッターと秘密の部屋

J・K・ローリングハリー・ポッターと秘密の部屋』ほか 松岡佑子訳、静山社
魔法学校で一年間を過ごし、夏休みでダーズリー家に戻ったハリーは意地悪なおじ、おばに監禁されて餓死寸前。やっと、親友のロンに助け出される。しかし、新学期が始まった途端、また事件に巻き込まれる。ホグワーツ校を襲う姿なき声。次々と犠牲者が出る。そしてハリーに疑いがかかる。果たしてハリーはスリザリン寮に入るべきだったのだろうか。ヴォルデモートとの対決がその答えを出してくれる。

 

コミック

ベビーシッター・ギン!(1) (Kissコミックス)

大和和紀ベビーシッター・ギン!
子育てで悩んでいるのは、あなただけじゃない! 世界でいちばんかわいい怪物・コドモの育て方に悩んだら、ギンさんに連絡しよう!!