亜紀書房・晶文社「亜紀書房 VS 晶文社 共同フェア From 神保町  並べて考える。このテーマ、この著作」2021年【20冊】(後編)

一昨日、昨日に引き続く後編の20冊です。21『山と獣と』、ふだん食べているものについて内省することはとても大切だと思います。内澤旬子世界屠畜紀行』や写真集『新版 屠場』にもこころに刺さるものがあるでしょう。25『暗い時代の人々』、京都木屋町のフランソア喫茶室に関する一章が(個人的に)印象に残りました(実はかなりの京都好き)。同店に興味のある方は、レジで売られていたこちら(今は高値がついていますが)もどうぞ。ハンナ・アーレントに同名の著作があります。26『コンヴァージェンス』、著書のなかで取りあげられているカルチャー・イメージはコミケです。巨大資本がプラットフォームを用意し消費者を集めるのではなく、ファンがオフ会を開き、盛り上がった勢いでサークルを立ち上げ、コミケにも出店しちゃおうか、みたいな。そこへ多くのプレイヤー(企業もそのひとり)が吸収されていくのです。

 

21.自然と対峙する深い生き方

山と獣と肉と皮

繁延あづさ『山と獣と肉と皮亜紀書房

「かわいそう」と「おいしそう」の境界はどこにあるのか──。写真家にして、一人の母親が撮り、料理してきた獣たちの「死と再生」のドキュメント。

薪を焚く

ラーシュ・ミッティング『薪を焚く晶文社

冬に備えて薪を準備する。間伐を行い、木を運び、保管し、乾燥させる。薪をめぐる人々と社会の物語を描き出す。世界15か国で50万部超のベストセラー!!

 

22.僕たちがシャッターを押すわけ

しゃにむに写真家

吉田亮人『しゃにむに写真家亜紀書房

もともと写真家を志していたわけではない。妻の一言から教員という仕事を捨て、無謀にもこの道を選んだ。専門的に学んだことのない男が、右も左も分からないまま踏み出し、挫折し、傷つき、そして国際的に評価を受けるようになるまでの10年を振り返る。

声めぐり

齋藤陽道『声めぐり晶文社

注目の写真家、齋藤陽道さんは、聴覚に障害がある。子どものときから不自由な生活をしてきたが、ろう学校で手話と出会ってから世界が変わった。手話、法要、格闘技、沈黙…。さまざまな声と写真を通し、世界を取り戻すまでを描く。

 

23.装丁家平野甲賀の仕事

ことば事始め

 池内紀ことば事始め亜紀書房

よく知っているようで実は遠いその意味を、辞書から記憶から手繰り寄せ、味わい直してみる。ことばの確かな手応えが残る教養エッセイ。著者も装丁家も亡くなり、二度と見られない組み合わせ。

文字を作る仕事

 鳥海修『文字を作る仕事晶文社

書体設計士の著者は、はたしてどのように文字作りの道を目指し、歩んできたのか? 水のような、空気のような書体を目指した文字づくり人生の本に装丁家平野甲賀の書き文字が彩を添える。

 

24.ジェンダーの視点で歴史を読む

SPQR ローマ帝国史I――共和政の時代

メアリー・ビアード『SPQR ローマ帝国史I亜紀書房

なぜローマ人は短期間に巨大帝国を築き得たのか? 「戦争に強い」だけではなし得ない、その偉業を支えたシステムとは? 政治、経済、意外な暮らしぶりを描く、驚きと興奮の歴史書

舌を抜かれる女たち

メアリー・ビアード『舌を抜かれる女たち晶文社

歴史上長らく、女性たちは公の場で語ることを封じられ、発言力のある女性は忌み嫌われてきた。古代ギリシア・ローマ以来の文芸・美術をひも解くと、見えてくるのは現代社会と地続きにあるミソジニーのルーツ。

 

25.暗黒な時代も現代も生きづらい

暗い時代の人々

森まゆみ暗い時代の人々亜紀書房

大正末から戦争に向かうあの「暗い時代」に人々は何を考えていたのか。精神の抑圧された時代に、「精神の自由」を掲げて戦った9人の生の軌跡。一人ひとりの生き様が抜群に面白く、この現代にこそ見習いたい。

生きづらさにまみれて

姫野桂『生きづらさにまみれて晶文社

毒親傾向のある両親に育てられた子ども時代、双極性障害摂食障害に苦しめられた就活、すさまじく向いていなかったOL時代、そして25歳でライターに転身し、やっと自分の居場所を見つけたものの……。

 

26.メディアと文化の複雑な関係

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

渡辺由佳里『ベストセラーで読み解く現代アメリカ亜紀書房

アメリカで話題となる本は、アメリカ人の興味を如実に映す。ミシェル・オバマやヒラリーの回想録、黒人や先住民から見える別の国アメリカ、ジェンダーの語られ方……。アメリカの今を厳選して伝えます。

コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化

ヘンリー・ジェンキンズ『コンヴァージェンス・カルチャー晶文社

映画やTVドラマはただ鑑賞するだけではなくなってきた。ゲーム化、コミック化、SNSコミュニティ、スピンアウト。視聴者が参加し作品世界に影響を与える現代のカルチャーを論じた名著。

 

27.それ、やっぱりハラスメントです

足をどかしてくれませんか。——メディアは女たちの声を届けているか

林香里『足をどかしてくれませんか。亜紀書房

男性中心に作られるメディアの「ふつう」は、社会の実像とズレている。メディアが世界を写す鏡なら、女性も、マイノリティも。〈みんな〉のメディアを一緒に考えよう。

さよなら! ハラスメント

小島慶子さよなら! ハラスメント晶文社

セクシャルハラスメントパワーハラスメント、人権無視、から学問の分野にもはびこるアカハラまで小島慶子が11人の識者に尋ね、ハラスメントの在りようとその解決への道を探る。

 

28.ファッションをとことん追求

靴磨きの本

長谷川裕也『靴磨きの本亜紀書房

自分に合った一足を見つけて、その靴に適した手入れをしながら履けば、靴は大事な相棒になり得る。お気に入りの相棒と10年付き合うために知っておくべき磨きの基本からトラブル対処までを世界一の靴磨き職人が徹底解説。

すこやかな服

マール コウサカ『すこやかな服晶文社

無店舗、顧客を招いての無料試着会、セールはしない。アパレル不況下に新しい販売方法で美しい服を世に送り出し続けるファッションブランド「foufou(フーフー)」。大注目のファッションブランドのデザイナーが伝える、「健康的な消費」のかたち。

 

29.料理は理論か感性か

水島シェフのロジカルクッキング――1ヵ月でプロ級の腕になる31の成功法則

島弘史『水島シェフのロジカルクッキング亜紀書房

科学的調理理論を取り入れ、独自の調理指導法を確立した水島シェフ。手順を忠実に守りさえすれば、誰でもプロの味を実現できます。そしてQRコードから全レシピの調理動画を視聴できます!

cook

坂口恭平cook晶文社

ひと月、朝昼晩料理を自炊しつづけた写真と手書きのレシピブック。鬱に悩んでいる著者は料理をすることによって “おれ、今日ちゃんとしてる” という自己肯定感と明日への力を手に入れる。なぜか作りたくなる身近な食べ物レシピ。

 

30.絵本に癒やされる

こどもたちは まっている (亜紀書房えほんシリーズ〈あき箱〉3)

荒井良二こどもたちは まっている亜紀書房

今日も水平線から日が昇る。繰り返す日々のなかで、みんな、いつも何かを待っている。船が通るのを、貨物列車を雨上がりを、夜明けを。第26回日本絵本賞受賞!

ヒーリング・キャット

葉祥明『ヒーリング・キャット晶文社

日々の生活が上手くいかない時、そっと寄りそって勇気づけてくれる青い猫。不思議と守られている気持ちになる、美しい絵本。

 

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