斎藤哲也編「あの人も読んでいる 研究者の口コミフェア」NHK出版新書、2021年【20冊】

NHK出版がプッシュする新書20冊です。2、9がAIをテーマにした著作ですね。同じトピックを扱う本に関してわたしが常々腑に落ちないのは、AIが脅威だというのなら、脅威にならないように使えばいいだけではないか、という点です。勿論、一部の企業や国家が悪用する可能性には注意を払う必要がありますが、基本、新技術は人間を脅かさない可能性を模索すればよいわけで・・・それがなぜ脅威論が優勢になるのか。新聞やワイドショーも同じですが、ひとは不安や脅威を突きつけられると、それに俄然注目するし本も売れる。今なら「中国」。13「恐怖の哲学」などは、なぜひとが恐怖に惹かれてしまうのかを科学的な知見をもとに解説しています。ほら、ここに並んだ新書のタイトルを見ても「絶滅」「異形」「傷つける」「監視」「残酷」「ナチス」といった単語が・・・。

 

試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する (NHK出版新書)

1.コーディネーター / 斎藤哲也試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する

思想の重要なポイントが毎回出題される「センター試験・倫理」。哲学を学び直すなら、これにあたるのが一番。ソクラテスプラトンからニーチェウィトゲンシュタインまで、厳選20問にチャレンジし、解説とイラストを楽しむうちに西洋思想の基本がサラリと頭に入ってくる。大ベストセラー『哲学用語図鑑』の監修者、初の書き下ろし新書!

AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望 (NHK出版新書)

2.齋藤耕平's レコメンド(経済思想学者)

丸山俊一・NHK取材班編著『AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望

「人間vs.AI」を超えた、時代の半歩先を思考せよ。万能論や脅威論を超え、フラットに現状を見つめることで見えてくる、テクノロジーの真のリスクと可能性。人類は、そして世界はこれからどうなるか!?世界の異能の知性が語る、人類とAIをめぐる最先端のビジョン。
 

愛と性と存在のはなし (NHK出版新書)

3.磯野真穂's レコメンド(医療人類学者)

赤坂真理愛と性と存在のはなし

性的多様性が叫ばれて久しいが、性をめぐる言説は今、あまりに人を分断させ、膠着させてはいないだろうか。そして私たちはそれ以前に、自らの“性”を本当に自覚しているのだろうか?「セクシュアル・マイノリティ」「LGBT」「性同一性障害」から「セクハラ」「草食男子」まで。既存の用語では決してすくいきれない人間存在の姿を、作家自身の生の探求を通して描き出す、魂の思索。

憲法の創造力 (NHK出版新書)

 

4.與那覇潤's レコメンド(評論家)

木村草太『憲法の創造力

良い憲法を創るということ。それは、新憲法を制定することでも、憲法を改正することでもない。憲法の原理を理解した上で、そこから、想像力を駆使して、より良き国家・社会のルールを創造することなのである。それはいかに可能か。君が代斉唱、一票の格差、9条などホットな憲法問題を題材にして、気鋭の憲法学者が、先端的な憲法学の成果を踏まえながら精緻かつ大胆に考察する。これまでにないラディカルで実践的な憲法入門書。

 

現代哲学の最前線 (NHK出版新書)

5.瀧澤弘和's レコメンド(経済学者)

仲正昌樹現代哲学の最前線

現代哲学―主として二〇世紀後半以後の哲学には、どこにどういう問いがあり、誰によって何が議論されているのか?本書は現代哲学における最もホットな5つのテーマ―正義論・承認論・自然主義心の哲学・新しい実在論の議論を整理し、そのエッセンスを解説。ロールズ、サンデルからサール、デネットマルクス・ガブリエルまで。変貌する哲学の見取り図を示す、本格的哲学入門。

 

絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書)

6.萱野稔人's レコメンド(哲学者)

更科功『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか

700万年に及ぶ人類史は、ホモ・サピエンス以外のすべての人類にとって絶滅の歴史に他ならない。彼らは決して「優れていなかった」わけではない。むしろ「弱者」たる私たちが、彼らのいいとこ取りをしながら生き延びたのだ。常識を覆す人類史研究の最前線を、エキサイティングに描き出した一冊。

奇妙な菌類 ミクロ世界の生存戦略 (NHK出版新書)

7.細将貴's レコメンド(生物学者

白水貴『奇妙な菌類 ミクロ世界の生存戦略

本物の花そっくりに化け、アリの身体を乗っ取って操り、罠を使って狩りをする…。陸上生物5億年の進化が生みだした、キノコとカビの変幻自在のサバイバル術とは!?したたかな社会生活術から地球生態系を支える驚異の能力まで、菌類たちの奇妙で面白い世界を気鋭の研究者が案内する。

転換期の日本へ 「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か (NHK出版新書)

8.中島岳志's レコメンド(政治・歴史学者

ジョン・W・ダワー、ガバン・マコーマック『転換期の日本へ 「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か

領土紛争、沖縄と基地、憲法改正集団的自衛権、核と原発歴史認識問題など、課題が山積するなか、東アジア情勢はいっそう緊迫度を増している。日本の選択はどこにあるのか?米国への「従属」を続けるのか、それともアジア中心の新たな安全保障体制を構築するのか。戦後日本を規定したサンフランシスコ体制の「負の遺産」を詳細に検討し、沖縄をはじめとする「辺境」の新たな可能性を見据えながら、取るべき方向性を提示する。世界的大家からの日本への提言!

AI vs.民主主義 高度化する世論操作の深層 (NHK出版新書)

9.梶谷懐's レコメンド(経済学者)

NHK取材班『AI vs.民主主義 高度化する世論操作の深層

AIが世論を誘導する―。一見信じられないような話が、「デジタル選挙戦略」としてすでに世界中で展開されている。2016年にトランプ大統領が誕生した一因ともいわれるその技術は今どのように高度化し、どれほどの影響力を持つのか。世論操作の告発者や関係者の生々しい証言を手がかりに、日本にも迫りくるその危機と民主主義の未来をさぐる、渾身の取材記録。

日本語と論理: 哲学者、その謎に挑む (NHK出版新書)

10.古田徹也's レコメンド(倫理学者)

飯田隆日本語と論理: 哲学者、その謎に挑む

日本語は非論理的な言語だと言われるが、果たして本当か。単数と複数の区別がなくても支障がないのはなぜ?「の」の意味とは?「こそあど」の論理的共通点とは?考えてみれば摩訶不思議な日本語の「謎」に、言語哲学の大家が満を持して挑む、「ことばの哲学」入門、決定版!

異形のものたち: 絵画のなかの「怪」を読む (NHK出版新書 651)

11.三牧聖子's レコメンド(国際政治学者)

中野京子異形のものたち: 絵画のなかの「怪」を読む 

我々は、何に魅入られ 何を恐れてきたのか――?人獣、モンスター、天使と悪魔、妖精、異様な建造物から魑魅魍魎まで――。一見して奇異で不穏、そしてメッセージ性に富む「異形のもの」の美術作品は、画家の「書きたい」という意志をも凌ぐ「見たい」という大きな需要によって支えられてきた。それら絵画はなぜ描かれ、なぜ鑑賞者に長く熱く支持されてきたのか。神への畏れ、異性への恐怖、淫欲と虚栄、人間本性への疑義、薄れゆく信仰心……描かれた怪の中に人間の本質を読む、「怖い絵」シリーズ著者待望の最新刊!

子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)

12.山口慎太郎's レコメンド(教育経済学者)

友田明美子どもの脳を傷つける親たち

マルトリートメント(不適切な養育)が子どもの脳を“物理的”に傷つけ、学習欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことが明らかになった。脳研究に取り組む小児精神科医が、科学的見地から子どもの脳を解明し、傷つきから守る方途と、健全なこころの発達に不可欠である愛着形成の重要性を説く。

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む NHK出版新書

13.源河亨's レコメンド(哲学者)

戸田山和久恐怖の哲学 ホラーで人間を読む

なぜわれわれはかくも多彩なものを恐れるのか?ときに恐怖と笑いが同居するのはなぜか?そもそもなぜわれわれは恐れるのか?人間存在のフクザツさを読み解くのに格好の素材がホラーだ。おなじみのホラー映画を鮮やかに分析し、感情の哲学から心理学、脳科学まで多様な知を縦横無尽に駆使、キョーフの正体に迫る。めくるめく読書体験、眠れぬ夜を保証するぜ!

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)

14.大屋雄裕's レコメンド(法哲学者)

梶谷懐・高口康太『幸福な監視国家・中国

習近平体制下で、政府・大企業が全人民の個人情報・行動記録を手中に収め、AI・アルゴリズムによって統治する「究極の独裁国家」への道をひた走っているかに見える中国。新疆ウイグル問題から香港デモまで、果たしていま、何が起きているのか!?気鋭の経済学者とジャーナリストが多角的に掘り下げる!

残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書)

15.郡司芽久's レコメンド(動物解剖学者)

更科功『残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか

心臓病・腰痛・難産になるようヒトは進化した!最新の研究が明らかにする、人体進化の不都合な真実―「人体」をテーマに進化の本質を描く知的エンターテインメント。

帰れないヨッパライたちへ 生きるための深層心理学 (NHK出版新書)

16.東畑開人's レコメンド(臨床心理学者)

きたやまおさむ帰れないヨッパライたちへ 生きるための深層心理学

外に向かって勝負せず、内向きの足の引っ張り合いに終始する現代日本。その根元に潜むもの―精神的にいまだ「母‐子」の二者関係が支配する「天国」にとどまり、父親的なライバルが出現する「母‐子‐父」の三角関係をこなしきれない心のあり方を問いかける。私たちが真に自立して生きる道筋はどこにあるのか。きたやま深層心理学の集大成にして最適の入門書。

日本人にとってキリスト教とは何か: 遠藤周作『深い河』から考える (NHK出版新書 662)

17.9月の新刊1

若松英輔日本人にとってキリスト教とは何か: 遠藤周作『深い河』から考える

批評家、随筆家、そしてNHK「100分de名著」で最多の指南役を務める著者が、自身と共通点も多いキリスト教文学の大家の作品から、「日本人とキリスト教」を考察する意欲作。本書の軸になるのは、遠藤最後の長編『深い河』。著者はこの作品を「遠藤周作一巻全集」と呼ぶべきもので、遠藤の問いがすべて凝縮されている重要作と語る。神、信仰、苦しみ、霊性、死について……。それら一つ一つを章タイトルに据え、登場人物の言動を丹念に追いながら、そこに『沈黙』や他作品を補助線として用いることで、遠藤や著者自身はもちろん、多くの日本人キリスト教者が追究した大テーマ「日本的霊性キリスト教の共鳴」を可能にする。

鎌倉殿と執権北条氏: 義時はいかに朝廷を乗り越えたか (NHK出版新書 661)

18.9月の新刊2

坂井孝一『鎌倉殿と執権北条氏: 義時はいかに朝廷を乗り越えたか

伊豆の地方豪族だった北条氏は、いかに流人時代の頼朝と出会い、源平合戦、幕府草創期を経て、熾烈な権力闘争の末に承久の乱を制したのか。源氏、朝廷側からだけでは見えてこない幕府内の駆け引きや争いの一部始終、複雑極まりない人間関係を、常にその中心にいた時政・政子・義時を軸に生き生きと描きだす。鎌倉殿はなぜ北条氏を重用し続けたのか、宿老十三人による合議制の内実とは、実朝暗殺事件の犯人と狙いは、なぜ義時は将軍にならなかったのか――。第一人者が通説を検証し、この時代をめぐる疑問の数々に答える決定版!

ポスト・ヒューマニズム テクノロジー時代の哲学入門 NHK出版新書

19.10月の新刊1

岡本裕一朗『ポスト・ヒューマニズム テクノロジー時代の哲学入門

なぜいま、哲学で「人間」が大きな問題となっているのか? 本書では、「思弁的実在論」「加速主義」「新実在論」といった話題の現代哲学を解説しながら、その論点をわかりやすく整理。AIからゲノム編集・機械化による人体改造、そして気候危機に資本主義まで。私たちが直面しているテクノロジー時代の具体的な問題を踏まえ、現在起こっている「思想の地殻変動」を鮮やかに描き出す!

ナチスと鉄道: 共和国の崩壊から独ソ戦、敗亡まで (NHK出版新書 663)

20.10月の新刊2

鴋澤歩『ナチスと鉄道: 共和国の崩壊から独ソ戦、敗亡まで

なにが独裁国家を崩壊させたのか? ナチス・ドイツを生み出した共和国の崩壊から、第二次世界大戦における敗亡までを、鉄道という切り口から描き出した通史。当時の最先端技術を結集した新車輌開発、交通政策をめぐる組織内外の駆け引き、鉄道からみた独ソ戦、死の特別列車……。「生存圏」拡大や「ユダヤ人絶滅政策」とも密接にかかわりながら、これまであまり語られてこなかったヒトラードイツ国鉄の「知られざる歴史」から、独裁国家終焉までの軌道を明らかにする!