FLAVORWIRE「陰鬱な冬にこそ読むダークな50冊」2014年

FLAVORWIREによる冬に読みたいセレクション50冊です。ここに集められた作品はかならずしもホラーばかりでもありませんね。もう少しひとのこころの暗部、狂気や邪悪、孤独に踏み込んだ作品の数々。6『ベル・ジャー』、著者の死の直前に刊行された自伝小説ですが、日本にも久坂葉子幾度目かの最期」という短編がありますね。久坂さんはこの作品を書きあげたあと、阪急電鉄に飛び込み、自殺しました。内容も事実上の遺書。享年21歳ですから、シルヴィア・プラスよりも9歳も若い。8『審判』、わけも分からず裁判にかけられ、わけも分からず処刑されていくという閉塞感マックスな作品。まさに26「出口なし」なのです。22『地下室の手記』だの28『コインロッカー・ベイビーズ』だの、セレクションの傾向がご理解いただけたかと思います(笑)日本語訳が出ているものは最大限見つけたつもりですが、見落としがあったらご容赦を。

 

完訳 グリム童話集〈1〉 (岩波文庫)

1.グリム兄弟『完訳 グリム童話集岩波文庫、1979年

比較言語学・説話学の分野に偉大な足跡しるすグリム兄弟が,ドイツ各地で口から耳へと伝えられた昔話の数々をあまねく採録.児童文学の一大宝庫であり,民間伝承研究に不可欠の文献である.名訳をもって知られるこの金田訳は,一八五七年刊の原著決定版から削除された昔話をも数多く収録する.KHM番号を付記した.

異形の愛

2.キャサリン・ダン『異形の愛河出書房新社、2017年

巡業サーカスを営む団長の父と献身的な母、天才アザラシ少年の兄、美しいシャム双子の姉、特別な力をもつ弟。愛しき“奇天烈カーニバル”は国中を騒がせ、やがて崩壊のときが来る…いまから、わが家の物語を語ろう。偏愛される伝説の名作。

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

3.シャーリィ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』(創元推理文庫

あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている…。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。

恥辱 (ハヤカワepi文庫)

4.J・M・クッツェー恥辱』ハヤカワepi文庫、2007年

52歳の大学教授デヴィッド・ラウリーは、2度の離婚を経験後、娼婦や手近な女性で自分の欲望をうまく処理してきた。だが、軽い気持ちから関係を持った女生徒に告発されると、人生は暗転する。大学は辞任に追い込まれ、同僚や学生からは容赦ない批判を受ける。デヴィッドは娘の住む片田舎の農園へと転がりこむが、そこにさえ新たな審判が待ち受けていた―現代文学史上に輝く、ノーベル賞作家の代表作。ブッカー賞受賞。

ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹

5.ジェフリー・ユージェニデスヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』ハヤカワepi文庫、2001年

リズボン家の姉妹が自殺した。何に取り憑かれてか、ヘビトンボの季節に次々と命を散らしていったのだった。美しく、個性的で、秘密めいた彼女たちに、あの頃、ぼくらはみな心を奪われ、姉妹のことなら何でも知ろうとした。だがある事件で厳格な両親の怒りを買った姉妹は、自由を奪われてしまった。ぼくらは姉妹を救い出そうとしたが、その想いが彼女たちに伝わることは永遠になかった…甘美で残酷な、異色の青春小説。

ベル・ジャー (Modern&Classic)

6.シルヴィア・プラスベル・ジャー河出書房新社

あの夏、ニューヨークはおしゃれで、華やかに輝いていた。でも、19歳の私はガラスの覆いに閉じこめられ、心は不思議に虚ろだった。30歳で自ら死を選んだ詩人シルヴィア・プラスの自伝的小説。

マクベス (新潮文庫)

7.シェイクスピアマクベス新潮文庫、1969年

かねてから、心の底では王位を望んでいたスコットランドの武将マクベスは、荒野で出会った三人の魔女の奇怪な予言と激しく意志的な夫人の教唆により野心を実行に移していく。王ダンカンを自分の城で暗殺し王位を奪ったマクベスは、その王位を失うことへの不安から次々と血に染まった手で罪を重ねていく……。シェイクスピア四大悲劇中でも最も密度の高い凝集力をもつ作品である。

審判 (岩波文庫)

8.カフカ審判岩波文庫、1966年

Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない。なぜ裁判に巻きこまれることになったのか、何の裁判かも彼には全く訳がわからない。そして次第に彼はどうしようもない窮地に追いこまれてゆく。全体をおおう得体の知れない不安。カフカ(1883‐1924)はこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう。

白の闇 (河出文庫)

9.ジョゼ・サラマーゴ白の闇河出文庫、2020年

「いいえ、先生、わたしは眼鏡もかけたことがないのです」。突然の失明が巻き起こす未曾有の事態。運転中の男から、車泥棒、篤実な目医者、美しき娼婦へと、「ミルク色の海」が感染していく。善意と悪意の狭間で人間の価値が試される。ノーベル賞作家が、「真に恐ろしい暴力的な状況」に挑み、世界を震撼させた傑作長篇。

ブラック・ホール (ShoPro Books)

10.チャールズ・バーンズ『ブラック・ホール小学館集英社プロダクション、2013年

1970年代中頃、アメリカ・シアトル郊外で未知の感染症が蔓延していた。ある者は脱皮するように身体全体の皮膚が剥がれ、ある者はトカゲのような尻尾が生え、またある者は喉元にできた口のようなものがうめき声を発する……。感染経路は性的接触とされているが、その病気にかかるのはなぜか10代の若者のみ。拭っても拭いきれない不安、孤独、恐怖の中で、混沌としたブラック・ホールに落ちていく若者たち。はたしてその果てに見える景色とは? 米オルタナティブコミック界の帝王チャールズ・バーンズ初邦訳!

Nightwork: Stories (English Edition)

11.Christine Schutt『Nightwork』Knopf、1996年

ブラックウォーター

12.ジョイス・キャロル・オーツブラックウォーター講談社

1969年7月、ケネディ家末弟で上院議員エドワード・ケネディ若い女性秘書を乗せてドライブに出た―。数時間後、クルマは橋から転落、ケネディだけが脱出し、女は水死した。警察への連絡は9時間後。いったい何が起きたのか?“ケネディ家第3の悲劇”を小説化。

ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤 (ハヤカワepi文庫)

13.コーマック・マッカーシーブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤』ハヤカワepi文庫、2018年

19世紀半ばのアメリカ。14歳で家出した少年は、各地を放浪した末にグラントン大尉の率いるインディアン討伐隊に加わった。彼はそこで隊の一員である異形の大男、ホールデン判事を知る。戦争は神だ―にこやかにそう述べる判事とともに、一行は荒野をわたり、暴虐の限りをつくす旅をつづけるが。美しく情け容赦のない世界とそこで生きる人々の生と死を冷徹な筆致で描き上げた、マッカーシー初期の代表作。

完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 (フェニックスシリーズ)

14.アート・スピーゲルマン完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』パンローリング、2020年

本書は、マンガ家アート・スピーゲルマンの代表作『マウス』と『マウス II』を一体化させ、翻訳に改訂を施した“完全版"。ホロコーストユダヤ人生存者ヴラデックの体験談を、息子のアート・スピーゲルマンがマンガに書き起こした傑作。独自の手法と視点で、これまでに語られてこなかった現実を伝え、世界に衝撃を与えた。本書の一番の特徴は、ユダヤ人をネズミ(=マウス)、ドイツ人をネコ、ポーランド人をブタ、アメリカ人をイヌとして描いていることだ。斬新かつ親しみやすいアプローチで、読者をホロコーストの真実へと引き込んでいく。

七王国の玉座〔改訂新版〕(上)(氷と炎の歌1)

15.ジョージ・R・R・マーティン七王国の玉座早川書房

ウェスタロス大陸の七王国は、長い夏が終わり、冬を迎えようとしていた。狂王エイリスを倒し、ターガリエン家から“鉄の玉座”を奪って以来、バラシオン家、ラニスター家、スターク家ら王国の諸候は、不安定な休戦状態を保ってきた。だが、ロバート王がエダード・スタークを強大な権力を持つ“王の手”に任命してから、状況は一変する。それぞれの家の覇権をめぐり様々な陰謀が渦巻き…。ローカス賞に輝く歴史絵巻、開幕。

ウィトゲンシュタインの愛人

16.デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人国書刊行会、2020年

地上から人が消え、最後の一人として生き残ったケイト。彼女はアメリカのとある海辺の家で暮らしながら、終末世界での日常生活のこと、日々考えたとりとめのないこと、家族と暮らした過去のこと、生存者を探しながら放置された自動車を乗り継いで世界中の美術館を旅して訪ねたこと、ギリシアを訪ねて神話世界に思いを巡らせたことなどを、タイプライターで書き続ける。彼女はほぼずっと孤独だった。そして時々、道に伝言を残していた…ジョイスベケットの系譜に連なる革新的作家デイヴィッド・マークソンの代表作にして、読む人の心を動揺させ、唯一無二のきらめきを放つ、息をのむほど知的で美しい“アメリカ実験小説の最高到達点”。

砂の女 (新潮文庫)

17.安部公房砂の女新潮文庫、2003年

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

Nox by Anne Carson(2010-04-27)

18.Anne Carson『Nox』New Directions、2010年

Elect Mr. Robinson for a Better World: A novel (Vintage Contemporaries)

19.Donald Antrim『Elect Mr. Robinson for a Better World』Vintage、2001年

ダンとアン

20.ウィルソン・ロールズダンとアン』めるくまーる、2002年

少年と犬は駆ける。月明かりの野を、凍りついた川面を。彼らが追ったのは森の獣だが、少年は夢を、犬たちは体内に流れる血の呼び声を追ってもいたのだ-。自らの少年時代の回想を軸とする物語。全米で40年のロングセラー。

黄金の街 (上) (講談社文庫)

21.リチャード・プライス『黄金の街講談社文庫、2013年

ニューヨーク、ロウアー・イースト・サイド―かつて黄金の未来を夢見た移民たちが最初に住み着いた街。さまざまな人種の人々が暮らすこの街に、カフェ・バークマンはあった。雇われたばかりの若いバーテンダーが路上で射殺され、犯行時に一緒にいたマネージャーのエリックが警察に連行されるが―。

地下室の手記 (光文社古典新訳文庫)

22.ドストエフスキー地下室の手記光文社古典新訳文庫、2007年

世間から軽蔑され虫けらのように扱われた男は、自分を笑った世界を笑い返すため、自意識という「地下室」に潜る。世の中を怒り、憎み、攻撃し、そして後悔の念からもがき苦しむ、中年の元小官吏のモノローグ。終わりのない絶望と戦う人間の姿が、ここにある。

闘争領域の拡大 (河出文庫)

23.ミシェル・ウエルベック闘争領域の拡大河出文庫、2018年

今一度思い出してみてほしい。あなたが闘争の領域に飛び込んだ時のことを―。「自由」の名の下、経済とセックスの領域で闘争が繰り広げられる現代社会。自意識の強い顧客、列車の女子学生、同僚の馬鹿女、薄着の看護師…。愛を得られぬ若者二人は出口のない迷路に陥っていく。『素粒子』『服従』ほかベストセラー作家、魂の原点。

Dark Road, The

24.Ma Jian『The Dark Road』Penguin Press、2013年

アメリカン・サイコ

25.ブレット・イーストン・エリスアメリカン・サイコ』角川文庫、1992年

舞台はマンハッタン。主人公パトリックはウォール街で働く若きエリート・ビジネスマン。富と地位を約束された彼は、“殺人鬼”という恐るべき別の顔を持つ。どこのレストランに顔がきくか、高級ブランド品にどれだけ通じているか…。輝かしい自己の社会的優越感を示すため、彼は徹底して消費生活の流行に執着する。そして、その優位性を確認するために、今日も獲物を探して“狂気の遊戯”を繰り広げるのであった…。消費行動と物欲に彩られた醜悪な時代の暗部を描き、物議をかもしだしたベストセラー小説。『レス・ザン・ゼロ』で鮮烈なデビューを果たした著者の話題作。

サルトル全集 第8巻 恭しき娼婦

26.ジャン・ポール・サルトル「出口なし」

収録本『サルトル全集 第8巻 恭しき娼婦人文書院、1982年

目次 蠅/出口なし/恭しき娼婦/あとがき

少年は残酷な弓を射る 上

27.ライオネル・シュライヴァー『少年は残酷な弓を射るイースト・プレス、2012年

キャリアウーマンのエヴァは37歳で息子ケヴィンを授かった。手放しで喜ぶ夫に対し、なぜかわが子に愛情を感じられないエヴァ。その複雑な胸中を見透かすかのように、ケヴィンは執拗な反抗を操り返す。父親には子供らしい無邪気さを振りまく一方、母親にだけ見せる狡猾な微笑、多発する謎の事件…そんな息子に“邪悪”の萌芽を見てとるが、エヴァの必死の警告に誰も耳を貸さない。やがて美しい少年に成長したケヴィンは、16歳を迎える3日前、全米を震撼させる事件を起こす―。100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。女性作家の最高峰・英オレンジ賞受賞作。

コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

28.村上龍コインロッカー・ベイビーズ講談社文庫、2009年

一九七二年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。母親を探して九州の孤島から消えたハシを追い、東京へとやって来たキクは、鰐のガリバーと暮らすアネモネに出会う。キクは小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊し、絶対の解放を希求する。毒薬のようで清清しい衝撃の現代文学の傑作が新装版に。

トレインスポッティング〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

29.アーヴィン・ウェルシュトレインスポッティング』ハヤカワ文庫NV、2015年

不況にあえぐエディンバラで、ドラッグとアルコールと暴力とセックスに明け暮れる若者たち。ヘロイン中毒のレントン、ケンカ好きのベクビー、気弱なスパッド、女たらしのシック・ボーイ。仕事も希望も何もない。絶望的な状況のなかで、レントンは仲間たちと一緒に売人から大量の麻薬を手に入れ、一攫千金を狙うのだが…。友情や裏切り、人生の選択という普遍的なテーマを描いた90年代を代表するイギリス青春小説の傑作。

一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

30.ジョージ・オーウェル一九八四年』ハヤカワepi文庫、2009年

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

ペインティッド・バード (東欧の想像力)

31.イェジー・コシンスキー『ペインティッド・バード松籟社、2011年

第二次大戦下、親元から疎開させられた6歳の男の子が、東欧の僻地をさまよう。ユダヤ人あるいはジプシーと見なされた少年が、その身で受け、またその目で見た、苛酷な暴力、非情な虐待、グロテスクな性的倒錯の数々―。

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)

32.アントニイ・バージェス時計じかけのオレンジ』ハヤカワepi文庫、2008年

近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく笑いながら繰りかえす。だがやがて、国家の手が少年に迫る―スタンリー・キューブリック監督映画原作にして、英国の二十世紀文学を代表するベスト・クラシック。幻の最終章を付加した完全版。

蜂工場 (ele-king books)

33.イアン・バンクス蜂工場ele-king books、2019年

そこはスコットランドの小さな島。海岸沿いの家では16歳のフランクが、学校にも行かずひっそり父と暮らしていた。彼はある日、精神病院にいるはずの兄エリックが脱走したことを知る。かつてエリックは犬を燃やすなど異常な行動をとっていたのだった。直後にかかってくる電話。「おれだ」「殺してやる! 」

コララインとボタンの魔女 (角川文庫)

34.ニール・ゲイマンコララインとボタンの魔女角川書店、2010年

古い家の2階に引っ越してきたコララインが奇妙なドアを開くと、むこうには大きなボタンの目をしたもうひとりのママとパパが待ち受けていた。うちにいるよりもずっとおもしろい世界に我を忘れそうになるコララインだったが、ある日、本物の両親がさらわれてしまう。このままじゃ、あたしの目もボタンにされちゃう。どうすればいいの?ダークでキュートなファンタジック・アドベンチャー

ろくでなしボーン (ハヤカワ・ノヴェルズ)

35.ドロシー・アリソン『ろくでなしボーン早川書房、1997年

“暴力、言葉、そして希望に取り憑かれた”作家、ドロシー・アリスン。暴力が日常的である家庭に生まれついた少女ボーンをいきいきとした語り口で描き、フィクションの癒しの力を証明した、全米ロングセラー作。性的虐待に蝕まれた少女のこころ―暴力の日々を生き抜いた著者が半自伝的に綴った処女小説。

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)

36.桐野夏生OUT講談社文庫、2002年

深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。

カッコーの巣の上で (白水Uブックス192/海外小説 永遠の本棚)

37.ケン・キージーカッコーの巣の上で白水Uブックス、2014年

刑務所の農場労働を逃れるため精神異常を装い、委託患者として精神病院にやってきた赤毛の男マックマーフィ。そこではラチェッド婦長が厳格な規則と薬物投与で患者たちの人間性を奪い、病棟を管理支配していた。マックマーフィは笑いと不屈の反抗心を武器に婦長に戦いを挑み、その姿に無気力状態にあった患者たちも自由の喜びと勇気を取り戻していくが…。体制への反逆と精神の自由を求める戦いを描いて鮮烈な感動を呼ぶ、20世紀アメリカ文学を代表する名作。

青い眼がほしい (ハヤカワepi文庫)

38.トニ・モリソン『青い眼がほしい』ハヤカワepi文庫、2001年

誰よりも青い眼にしてください、と黒人の少女ピコーラは祈った。そうしたら、みんなが私を愛してくれるかもしれないから。白い肌やブロンドの髪の毛、そして青い眼。美や人間の価値は白人の世界にのみ見出され、そこに属さない黒人には存在意義すら認められない。自らの価値に気づかず、無邪気にあこがれを抱くだけのピコーラに悲劇は起きた―白人が定めた価値観を痛烈に問いただす、ノーベル賞作家の鮮烈なデビュー作。

My Happy Life (English Edition)

39.Lydia Millet『My Happy Life』Soft Skull Press、2007年

ジーザス・サン (エクス・リブリス)

40.デニス・ジョンソンジーザス・サン』エクス・リブリス、2009年

『ダンダン』―俺はダンダンから薬をもらおうと、農場まで出かけた。しかしダンダンは、銃で知り合いを撃ってしまったという。ブレーキの効かない車で、死にかけた男を医者まで送り届けるドライブが始まった。『仕事』―俺はホテルでガールフレンドとヘロインを打ちまくっていた。喧嘩をした翌朝、バーで金儲けの話に乗ることにした。空き家に押し入り、銅線を集めて、スクラップとして売る仕事だった。『緊急』―俺は緊急治療室で働きはじめた。ぶらぶらするか、雑役夫と薬を盗むしかなかった。深夜、目にナイフが刺さった男が連れられてきた。手術の準備中、雑役夫がそのナイフを抜いてしまった。最果てでもがき、生きる、破滅的な人びと。幻覚のような語りが心を震わす、11の短篇。

Citrus County (McSweeney's Rectangulars) (English Edition)

41.John Brandon『Citrus County』Mcsweeney’s、2011年

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)

42.フラナリー・オコナー善人はなかなかいない

収録本『フラナリー・オコナー全短篇ちくま文庫、2009年

フラナリー・オコナーは難病に苦しみながらも39歳で亡くなるまで精力的に書き続けた。その残酷なまでの筆力と冷徹な観察眼は、人間の奥底にある醜さと希望を描き出す。キリスト教精神を下敷きに簡潔な文体で書かれたその作品は、鮮烈なイメージとユーモアのまじった独特の世界を作る。個人全訳による全短篇。上巻は短篇集『善人はなかなかいない』と初期作品を収録。

Infinite Jest (English Edition)

43.David Foster Wallace『Infinite Jest』Abacus、1997年

White is for Witching (English Edition)

44.Helen Oyeyemi『White is for Witching』Picador、2010年

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

45.カズオ・イシグロわたしを離さないで』ハヤカワepi文庫、2008年

優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。

太った女、やせた女 (Hayakawa Novels)

46.メアリー・ゲイツキル『太った女、やせた女早川書房、1993年

太った女ドロシーとやせた女ジャスティーン。容姿も階層も価値観も対照的な2人が、実は同様に性的恥辱・暴力・崩壊家庭の犠牲者であったという連帯を軸に、人間らしい繋りと自己の救済をかち取ろうともがく魂の遍歴を描く。

家族の終わりに

47.リチャード・イエーツ『家族の終わりに』ヴィレッジブックス、2008年

1950年後半、高度経済成長期のニューヨーク郊外。理想のマイホームと、大企業の一員としての地位を得ながらも、現実からの逃避と、自由な人生を夢見る若き人びと。常識から逸脱できぬまま、心の声を押し殺すうちに生まれた暗雲が、しだいに幸せな家庭にも影を落としてゆく…。何不自由ない暮らしのなかで、心はなぜか不自由になっていった…。ふとしたきっかけで崩れてゆく「家族」という名の幻想を描いた物語。

心は孤独な狩人

48.カーソン・マッカラーズ心は孤独な狩人』新潮社、2020年

誰もが孤独の部屋の中から、報われない愛の行き先を探している。1930年代末、アメリカ南部の町のカフェに聾啞の男が現れた。大不況、経済格差、黒人差別……。店に集う人々の苦しみを男は静かに聞き入れ、多感な少女を優しく包みこむ。だがその心は決して満たされない――。フィッツジェラルドサリンジャーと並ぶ愛読書として、村上春樹がとっておきにしていた古典的名作、新訳で復活!

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

49.セリーヌ夜の果てへの旅』中公文庫、2003年

全世界の欺瞞を呪詛し、その糾弾に生涯を賭け、ついに絶望的な闘いに傷つき倒れた“呪われた作家”セリーヌの自伝的小説。上巻は、第一次世界大戦に志願入隊し、武勲をたてるも、重傷を負い、強い反戦思想をうえつけられ、各地を遍歴してゆく様を描く。一部改訳の決定版。

闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

50.コンラッド闇の奥光文社古典新訳文庫、2009年

船乗りマーロウはかつて、象牙交易で絶大な権力を握る人物クルツを救出するため、アフリカの奥地へ河を遡る旅に出た。募るクルツへの興味、森に潜む黒人たちとの遭遇、底知れぬ力を秘め沈黙する密林。ついに対面したクルツの最期の言葉と、そこでマーロウが発見した真実とは。

 

元記事:

flavorwire.com