東雅夫編『刀 文豪怪談ライバルズ!』ちくま文庫、2021年【14冊】

KEYBOOK『刀 文豪怪談ライバルズ!』の底本から14冊のご紹介です。最近だとゲームやアニメでおなじみの『Fate』シリーズにさまざまな宝具が登場しますが、武器というのは単なる道具ではないんですよね。そこにはひとの想いや悪意が込められている。『新世紀エヴァンゲリオン』ではロンギヌスの槍がひとの心の壁を溶かしていましたし、持つひとによって剣の色が変化するのは『鬼滅の刃』でした。映画『ファンタズム』では、殺人鉄球・シルバースフィアがトールマンに匹敵する映画の代名詞になりましたし、『GUNSLINGER GIRL』は愛らしい少女暗殺者とごつい武器のミスマッチングが魅力です。

さて、今や底本の入手が難しい5「古刀譚」や11「淡路屋敷の宝塔」といった作品がさりげなく混じっているのが本書の魅力。新旧の作品のあいだに架け橋を設けることで、読むひとのなかに化学変化ともいえる読書体験を引き起こせるのがアンソロジーです。わたしが言うのもおかしいですが、こうして本を紹介しているせいで、最近欲しい本が増えて困っています(笑)

 

刀 ――文豪怪談ライバルズ! (ちくま文庫)

KEYBOOK

東雅夫編『刀 文豪怪談ライバルズ!ちくま文庫、2021年

神代の昔から人々の心を魅了し続ける「刀」と「剣」。美麗でありながら業深きこの存在を「文豪」たちが描き出す――。古今の枠組みを自在に飛び越えていく名品だけを一冊に集結。業物同士が唸りを上げる異色の怪談傑作選!

 

夜叉の舌 (角川ホラー文庫)

1.赤江瀑草薙剣は沈んだ」

底本『夜叉の舌角川ホラー文庫、1996年

近江の町はずれで、黙々と刀剣の鞘づくりに打ち込む若き見習い職人・平河友威と、彼を見守り、その運命を導びき続ける一匹の赤い蜘蛛。両者の間に秘められた、妖しく摩訶不思議な出逢いとは。(表題作)夢幻、霊魂、死、エロス…魔性の世界を耽美色豊かに描き上げた、赤江美学の集大成。単行本未収録の秀作も収めた、自選恐怖小説集。

かまいたち (新潮文庫)

2.宮部みゆき「騒ぐ刀」

底本『かまいたち新潮文庫、1996年

夜な夜な出没して江戸市中を騒がす正体不明の辻斬り“かまいたち”。人は斬っても懐中は狙わないだけに人々の恐怖はいよいよ募っていた。そんなある晩、町医者の娘おようは辻斬りの現場を目撃してしまう…。サスペンス色の強い表題作はじめ、純朴な夫婦に芽生えた欲望を描く「師走の客」、超能力をテーマにした「迷い鳩」「騒ぐ刀」を収録。宮部ワールドの原点を示す時代小説短編集。

結ぶ (創元推理文庫)

3.皆川博子「花の眉間尺」

底本『結ぶ創元推理文庫、2013年

彼岸此岸もわからぬ場で「縫う―縫われる」行為を考察する独白が、異様な最後の一行で結ばれる表題作ほか、単行本未収録作4篇を加えた18編の幻想小説

女切り (ハルキ・ホラー文庫)

4.加門七海「女切り」

底本『女切り』ハルキ・ホラー文庫、2004年

妖かしと異形の世界を通じ、名もないものたちの、愛と孤独と哀しみを描く、恐ろしくも甘美で魅惑的な物語、八篇を収録。

聴雪廬小品 (1940年)

5.日夏耿之介「古刀譚」

底本『聴雪廬小品中央公論社、1940年

戦国名刀伝 (文春文庫)

6.東郷隆「にっかり」

底本『戦国名刀伝』文春文庫、2003年

無類の刀好きだった秀吉は膨大な量の名刀を収集していたが、中に「にっかり」という不思議な名と由来をもつ一腰があった―。古来、刀は武器としてのみならず邪を祓い、身を守護すると信じられた。ゆえに、武将たちは己の佩刀に強いこだわりを抱いた。知将、猛将と謳われた武人たちと名刀との不思議な縁を描く傑作短篇集。

楼蘭 (新潮文庫)

7.井上靖「幽鬼」

底本『楼蘭新潮文庫、1959年

大国の漢と匈奴(きょうど)とにはさまれた弱小国楼蘭は、匈奴の劫掠(ごうりゃく)から逃れるために住み慣れたロブ湖畔の城邑から新しい都城に移り、漢の庇護下に入った。新しい国家は鄯善(ぜんぜん)と呼ばれたが、人々は自分たちの故地を忘れたことはなかった。それから数百年を経て、若い武将が祖先の地を奪回しようと計ったが……。
西域の一オアシス国家の苛烈な運命を描く表題作など、歴史作品を中心に12編を収録。用語、史実等の詳細な注釈を付す。

播磨国風土記

8.東雅夫訳「蛇か、剣か」

底本『播磨国風土記』「讃容の郡」より訳出

注)沖森卓也他『播磨国風土記山川出版社、2005年で原文が読めます。

新版 平家物語(一) 全訳注 (講談社学術文庫)

9.東雅夫訳「八岐大蛇の執念」

底本 塚本哲三編『平家物語』(有朋堂書店、1929年版)所収「剣巻」より訳出

注)国会図書館デジタルライブラリーほか、『新版 平家物語(一) 全訳注』(講談社学術文庫、2017年)で原文が読めます。

柳田国男全集〈2〉遠野物語

10.柳田國男「赤い蛇」(『遠野物語拾遺』より142、143、144話)

底本『柳田国男全集2筑摩書房、1997年

日本民俗学の曙光と言われる「遠野物語」を収め、併せて明治農業政策の極化を示す「時代ト農政」、柳田民俗学の初期の考え方を呈示する「山島民譚集」を収録。

佐久口碑伝説集 (1978年)

11.掛川亀太郎「淡路屋敷の宝塔」

底本『佐久口碑伝説集』佐久教育会編、1978年

怪談と名刀 (双葉文庫)

12.本堂平四郎「有馬包国」

底本 東雅夫編『怪談と名刀双葉文庫、2014年

名物警視として活躍後、実業界に転じて通信事業の世界で風雲児となった著者が、その晩年、刀剣研究を志し著した幻の名著。名刀妖刀にまつわる怪談奇聞の数々を、物語的興趣を湛えて活写している。昭和10年初刊以来、史上初の再編復刊なる!

九十九本の妖刀 (ミステリ珍本全集07)

 

13.大河内常平「妖刀記」

底本 日下三蔵編『九十九本の妖刀戎光祥出版、2015年

刀剣研究家としても知られる著者が刀を題材に描いた怪奇ミステリを集大成!菅原文太主演のカルト映画「九十九本目の生娘」の原作小説に長篇『餓鬼の館』と単行本未収録作7篇を加えた決定版!

鏡花全集〈別巻〉 (1976年)

 

14.泉鏡花「妖剣紀聞」

底本『鏡花全集 別巻岩波書店、1976年