格差と搾取の構造を残酷かつ鮮烈に描く。若い船員の「私」は横浜の街で怪しげな男に誘われ、路地裏の不気味な建物へ連れて行かれる。そこで「私」が目にしたのは、全裸で横たわる瀕死の女だった。当初は彼女を単なる売春婦と思い、嫌悪や困惑を覚える。しかし、男から「自分たちは過酷な労働で使い潰された『搾取の残りカス』であり、重病の彼女に薬や食事を与えるために客を引いている」という切実な事情を聞かされる。「私」は己の無知と傲慢を恥じ、彼女の姿に被搾取階級の過酷な運命を象徴する「殉教者」を見出す。最後は涙を流し、全財産を渡して立ち去る。