太宰治「トカトントン」

敗戦に虚脱する「私」は、負けてもなお戦うべしという軍人の演説に感じ入るが、近くで大工が使っていた金槌の音「トカトントン」を聞いた途端、気持ちの高ぶりは雲散霧消する。それからの「私」は、作家への夢、労働や恋愛への情熱、政治運動や社会運動への共感、スポーツへの感動など、何事かに昂揚するたび「トカトントン」が聞こえてきては、気持ちがくじけて白々しくなってしまう。こうした悩みを手紙で受け取った「某作家」は聖書の一節を引いて「私」の欺瞞を戒める。「トカトントン」が暗喩するものとは一体何か?