矢野浩三郎編訳「恐怖と怪奇名作集」シリーズ、岩崎書店【30冊】
ジュブナイル(子供向け)に分類されるレーベルですが、本文はすべて大人向けのものと同じです。子供向けに表現を抑制したり、省略したりというようなことはありません。いち作家いち作品という縛りになっていますが、このシリーズ、本当に作品のセレクトが素晴らしい。欧米の古典ホラーに手を出してみたいけれど、何を読んだらいいか分からないひとにとっての格好の入門書になっています。ところが、残念なことに本書自体はとっくに絶版になっており、古書店で売られていてもそこそこの高値(目利きには人気がある証拠)。ですので、同じ作品が収録されているほかの著書を集めてみました。ただ、その本がまた入手しづらかったり、高値がついているケースもありますのでご注意を。
2-1「真夜中の太陽」、破滅的で読んでて暗澹となってきます。ロッド・サーリングはドラマ『トワイライト・ゾーン』の脚本家として知られています。3-1「今日もいい天気」、スティーヴン・キング『レギュレイターズ』の原案(キングファン向け情報)。4-1「猿の手」、『化物語』するがモンキーの原案(今の若者向け情報)。5-3「逃亡者と運命」、護送列車から逃亡する3人を待ち受ける運命。ホラーというより『世にも奇妙な物語』的なテイストです。
1.シデムシの歌
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『シデムシの歌 恐怖と怪奇名作集1』岩崎書店、1998年 心臓の悪いコーニロさんが倒れて、立ちあがれないでいると、なにかが胸の上にとまりました。シデムシでした。シデムシは、動物の死骸をたべながら生きていく昆虫です…。標題作のダーレス「シデムシの歌」の他に、ボーモント「夢を見るかも」、フレムリン「2階の部屋」、ロレンス「木馬に乗る少年」の4編を収録した、恐怖・怪奇小説の珠玉集。 |
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1-1.オーガスト・ダーレス「シデムシの歌」 収録本「しでむしの歌」、『幻想小説大全―鳥獣虫魚』北宋社、2002年 無限と現実の結界に立ち現れ、人に憑き人を食らい、世界を混沌のるつぼへと導く幻獣、妖虫、怪魚たち…。恐怖と怪奇ファンに贈る幻想小説集成。1994年刊「幻獣の遺産」「夢見る妖虫たち」「釣魚の迷宮」の3冊を合本。 |
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1-2.シリア・フレムリン「アパートの空き部屋」 収録本「階上の部屋」、『続世界怪奇ミステリ傑作選―“13"のショック』イフ・ノベルズ、1977年 |
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1-3.チャールズ・ボーモント「もしも夢を見たら…」 収録本「夢を見るかも…」、『夜の旅その他の旅』早川書房、2006年 平凡な何気ない日常から、小さな芽が出て、育ち、色鮮やかな花が咲く。悪夢という名の大輪が…。手品師のごとき手腕で紡ぎ出す、不思議な不思議な物語全15編を収録。 |
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1-4.D・H・ローレンス「木馬に乗る少年」 収録本「木馬の勝者」、『ロレンス短篇集』岩波文庫、1986年 金への妄執にとりつかれた少年の悲劇を寓話風に物語る「木馬の勝者」、夫を小気味よくあしらう若い女房の姿を軽妙なタッチで描いた「女房のたくらみ」など8篇を収める。リズムと色彩感あふれる文章にのったスピーディな筋運び、たくまざるユーモア。この一群の短篇に、読者はロレンスの思いがけない新鮮な像を見出すに違いない。 |
2.真夜中の太陽
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『真夜中の太陽 恐怖と怪奇名作集2』岩崎書店、1998年 地球がとつぜん、その楕円軌道をはずれ、しだいに太陽に接近していく軌道をとりだしました。いまや、真夜中も昼間と変らないくらい暑く、同じくらい明るかったのです…。表題作のサーリング「真夜中の太陽」の他に、ロビンスン「水のなかの顔」、ラヴクラフト「ランドルフ・カーターの証言」、マシスン「高度二万フィートの悪夢」を収録。 |
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2-1.ロッド・サーリング「真夜中の太陽」 収録本「同」、『ミステリーゾーン2』文春文庫、1986年 原題を「トワイライトゾーン」という60年代のTVシリーズが今でも多くの人に余韻を残しているのは、何といってもオリジナル・ストーリーの素晴らしさの故だろう。再放映、ビテオ化、スピルバーグによる映画化、そして原作出版と生きつづけるサーリングの傑作群から名作の誉れ高い「真夜中の太陽」他10篇収録。TVスチール付。 |
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2-2.H・P・ラヴクラフト「ランドルフ・カーターの語ったこと」 収録本「ランドルフ・カーターの陳述」、『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』新潮文庫、2020年 ダイヤー率いるミスカトニック大学探検隊は、南極大陸に足を踏み入れた。彼らは禁断の書『ネクロノミコン』の記述と重なる、奇怪きわまる化石を発見する(表題作)。一九〇八年五月十四日、ピーズリー教授の身に異変が起きた。“大いなる種族”との精神の交換がなされたのだ(「時間からの影」)。闇の巨匠ラヴクラフトの神話群より傑作八篇を精選し、新たに訳出。あなたに、眠れぬ夜を約束する。 |
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2-3.レノックス・ロビンスン「水のなかの顔」 収録本「顔」、『怪奇と幻想3 残酷なファンタジー』角川文庫、1977年 |
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2-4.リチャード・マシスン「高度7000メートルの悪夢」 収録本「高度二万フィートの悪夢」、『死んだら飛べる』竹書房文庫、2019年 あなたはその飛行機と呼ばれる、柩のような金属とプラスチックのチューブが安全だと信じているのか?このアンソロジーを読めば考えが変わるかもしれない。ひとたび機上のひととなってしまえば、あなたはもう何もできない。積んでいる貨物が恐ろしい音を立てようが、大空でモンスターと遭遇しても、未来人の誘拐部隊がやってこようとも、戦争が始まっても、ゾンビが襲ってこようとも、密室殺人が起ころうとも、あなたは何もできないのだ。飛行機に乗るご予定がおありの方は強い勇気をお持ちであることを願う。なぜならこの本を読めば、どれだけ統計上は飛行機が安全だと言われようが、決して統計ではわからない恐怖が待っていることがわかるはずだから。スティーヴン・キング、ジョー・ヒルの書き下ろし作品など初訳10篇を含む、全17篇の恐怖のフライトへようこそ。 |
3.今日もいい天気
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『今日もいい天気 恐怖と怪奇名作集3』岩崎書店、1998年 ピークスビル村の人びとは、アンソニー坊やに心のなかを読まれないように、たえずビクビクして生活しなければなりませんでした。もし読まれてしまったら、どんな悲惨な目にあわされるかわかったものではないのです!表題作のほかに、ロード「メリフロア医師の最後の患者」、ニール「鏡よ鏡」、ミドルトン「幽霊船」の3編を収録。 |
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3-1.ジェローム・ビクスビイ「今日もいい天気」 収録本「きょうも上天気」、『きょうも上天気 SF短編傑作選』角川文庫、2010年 何度も映像化されているジェローム・ビクスビイの表題作の他、そうそうたる顔ぶれの、意表を突く企みに満ちた永遠の名作を、浅倉久志の名翻訳でおくる珠玉のSF短編傑作集。 |
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3-2.リチャード・ミドルトン「幽霊船」 ある嵐の日、かぶ畑の真ん中に錨をおろした幽霊船が平和な村にもたらした大騒動…。黄金を惜しむように言葉を惜しみ、数篇の珠玉の傑作を遺して異郷の地に倒れた「最後の世紀末作家」ミドルトンの名短篇集。 |
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3-3.ミンドレット・ロード「メリフロア医師の最後の患者」 収録本「メリフロア博士の最後の患者」、『怪奇と幻想 吸血鬼と魔女』角川文庫、1975年 |
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3-4.ナイジェル・ニール「鏡よ鏡」 |
4.猿の手
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『猿の手 恐怖と怪奇名作集4』岩崎書店、1998年 ホワイト氏は、友人のモリス曹長からインドのめずらしいおみやげをもらいました。ミイラの手みたいにひからびた、ただの猿の手ですが、まじないがかけられていて、三つの願いがかなえられる、というのですが―。表題作「猿の手」のほかに、キップリング「獣のしるし」、ディケンズ「信号手」、ジェイムズ「マグナス伯爵」の3編を収録。 |
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4-1.W・W・ジェイコブズ「猿の手」 収録本「同」、『30の神品 ショートショート傑作選』扶桑社文庫、2016年 ショートショート界の第一人者にして星新一唯一の弟子である江坂遊。そんな選者が、数千、数万に及ぶ古今東西のあらゆるショートショート作品の中から、一作家一作品のしばりで選出した、究極至高の30作。星新一、筒井康隆、半村良、サキ、スレッサー、アシモフ…誰もが知る有名作から思いがけない傑作まで、バラエティに富んだ珠玉の名品を取り揃えた。 |
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4-2.ラドヤード・キップリング「獣のしるし」 収録本「獣の印」、『イギリス幻想小説傑作集』白水Uブックス、1985年
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4-3.チャールズ・ディケンズ「信号手」 ユーモアと明るい笑いの作家ディケンズ(1812―70)の世界も短篇に目を転ずると相貌を一変する。自らの血に流れる狂気を自覚した男が妻を殺害するに至る「狂人の手記」、実直な鉄道員が幽霊の発する警告に怯える「信号手」など、人間の暗い異常な心理を追究した作品を中心に、幻想的作風の短篇も加え11篇を収録する。 |
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4-4.M・R・ジェイムズ「マグナス伯爵」 収録本「同」、『M・R・ジェイムズ怪談全集1』創元推理文庫。2001年 ミステリにおけるコナン・ドイルと並び称されるイギリス怪奇小説の巨匠、M・R・ジェイムズ。彼が学究生活のかたわら創作し、友人や学生たちに語り聞かせた怪談の全てを2巻に収める。第1巻にはラヴクラフトをも嘆息せしめた傑作「マグナス伯爵」や、ありえぬ部屋の怪を描く「十三号室」など、古書・古物趣味に彩られた恐怖の愉しみ溢れる15篇を収録。 |
5.監視者
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『監視者 恐怖と怪奇名作集5』岩崎書店、1999年 ティンズリー台所用品会社でハエやカを見かけることは、まずありません。社長じまんのハエたたきで、一匹のこらず、たたきつぶされてしまうからです。社長が異常なまでに虫をきらうのは、子どものころに、あの悲惨な事件が起こったからです…。表題作のほかに、グッドウィンの「まゆ」、コッブの「逃亡者と運命」の2編を収録。 |
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5-1.レイ・ブラッドベリ「監視者」 収録本「同」、『黒いカーニバル 』ハヤカワ文庫SF、2013年 ブラッドベリの幻の作品集として名高い処女短篇集『黒いカーニバル』から精選した作品にウィアード・テールズなどのパルプ雑誌に発表された作品を加えた初期傑作選。深夜のカーニバルで、団長が乗った観覧車がくるくる逆まわりするたびに奇怪なことが起こる「黒い観覧車」、かつての想い人である少女を失った湖を男が婚約者とともに再び訪れる「みずうみ」など、叙情SFの名手が贈る恐怖と幻想にあふれた24篇の物語。 |
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5-2.ジョン・B・L・グッドウィン「まゆ」 収録本「繭」、『幻想と怪奇 ポオ蒐集家』ハヤカワ文庫NV、2005年 幽霊や怪物は、人間の頭の中に潜むと怖い。具体的な描写を超えた恐怖を読者に想像させるのが、怪談やホラー小説の真髄だ。それには余分な描写を削ぎ落とした、短篇という形式が最適だ―親子三代にわたるコレクターの執念が、ついには正気の世界ばかりか人知をも超越してしまう、ロバート・ブロックの表題作をはじめ、ブラッドベリ、P.K.ディック、ハイスミスらの秀作14篇を収録した伝説のアンソロジー。 |
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5-3.アーヴィン・S・コッブ「逃亡者と運命」 収録本「信・望・愛」、『世界推理短編傑作集4』創元推理文庫、2019年 欧米では、世界の短編推理小説の傑作集を編纂する試みが、しばしば行われている。本書はそれらの傑作集の中から、編者の愛読する珠玉の名作を厳選して全5巻に収録し、併せて19世紀半ばから1950年代に至るまでの短編推理小説の歴史的展望を読者に提供する。本巻には高評価を得た「オッターモール氏の手」をはじめ、“奇妙な味”や傑作や、本格の巨匠の作品などが勢揃いした。 |
6.猫の影
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『猫の影 恐怖と怪奇名作集6』岩崎書店、1999年 高校生のロニーが投げ捨てたタバコで火事になり、ミングルばあさんは焼け死んでしまいました。おばあさんがかわいがっていた黒猫が、たえず、ロニーの行手に待ちかまえるようになったのは、それからのことです―。表題作のほかに、ストーカーの「牝猫」、リゲットの「ネコ男」、ベネの「猫の王様」など、猫をテーマにした恐怖小説4編を収録。 |
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6-1.ロバート・ブロック「猫の影」 収録本「魔女の猫」、『猫に関する恐怖小説』徳間文庫、1984年
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6-2.ブラム・ストーカー「古城の黒猫」 収録本「猫の復讐」、『乱歩の選んだベスト・ホラー』ちくま文庫、2000年 乱歩のエッセイ「怪談入門」は、幻想怪奇小説ファンには絶好のブックガイドである。その中から俊英ミステリ研究家が選び抜いた12篇。名作「猿の手」原典版新訳をはじめ、横溝正史のユーモラスな訳が冴える「専売特許大統領」、ホテルの同じ部屋で縊死者が続出するミステリ「蜘蛛」と、乱歩によるその変奏曲「目羅博士」他、ドイル「樽工場の怪」など個性的な作品がずらり。 |
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6-3.スティーヴン・ヴィンセント・ベネー「猫の王様」 愛と殺戮のためにつくられた、この頑丈な獣が隠し持っているすべての美しさに、あなた達は恐らく気づかなかったのだ…。チェーホフ、チャペック、カルヴィーノら、猫に魅せられた世界の文学者が紡ぎ出す、13のアンソロジー。 |
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6-4.マイケル・ジョセフ「茶色の猫」 収録本「黄色い猫」、『異色恐怖小説傑作選3 魔の生命体』ソノラマ文庫、1986年 恐ろしい目には遭いたくない。しかし、怖い話は読みたい…。人里離れた実験室や、荒野の古屋敷、異国の古城ばかりではない。「魔」や「怪」の魅力にひかれ、それを生み出す作家たちの手にかかれば、さわやかな朝の食卓や、白昼ののどかな街角もたちまち恐怖の舞台と化すのである。名アンソロジスト、ヴァン・サールが,有名、無名にこだわらず、「怖さ」優先で選んだイギリス異色恐怖短編集。「魔の配剤」「魔の創造者」に次ぐ3冊目は傑作15編を収録。 |
7.墓場から帰る
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『墓場から帰る 恐怖と怪奇名作集7』岩崎書店、1999年 マッシーは、息苦しくなって、目をさましたけれど、身動きできません。それもそのはず、彼は、長さも幅も彼の体とちょうど同じくらいの、容器の中にいるらしいのです。そういった寸法の容器は、棺しかありません…。表題作のほかに、バウチャーの「やつらは噛む」、ホジスンの「闇の海の声」、カーシュの「骨のない人間」の4編を収録。 |
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7-1.アントニー・バウチャー「やつらは噛む」 アメリカのミステリ評論家として知られるバウチャーの中短編集。博学多識の教養を縦横に発揮した作品はミステリやSFの形式を取っているが、むしろダーク・ファンタジーと呼ぶにふさわしい。表題作ほか全12編を収録。 |
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7-2.ロバート・シルヴァーバーグ「墓場から帰る」 収録本「墓場からの帰還」、『怪奇と幻想 吸血鬼と魔女』角川文庫、1975年 |
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大人から子供まで、多くの人々を熱狂させる未知の生物!!純文学の世界をはじめ、スラップスティック・コメディ、批評エッセイなど、あらゆる分野に登場するとびきりの『怪獣』たちを集大成した、空前絶後の大アンソロジー。寓話、メルヘン、SF、ホラー…破壊の恐怖をひき起こしながらも、どこか懐かしく、愛らしい異形の者たち。 |
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7-4.ジェラルド・カーシュ「骨のない人間」 アンブローズ・ビアスの失踪という米文学史上最大の謎を題材に、不気味なファンタジーを創造し、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞を受賞した名作「壜の中の手記」をはじめ、無人島で発見された白骨に秘められた哀しくも恐ろしい愛の物語「豚の島の女王」、贈られた者に災厄をもたらす呪いの指輪をめぐる逸話「破滅の種子」、18世紀英国の漁師の網にかかった極彩色の怪物の途方もない物語「ブライトンの怪物」、戦争を糧に強大な力を獲得していく死の商人サーレクの奇怪な生涯を描いた力作「死こそわが同志」他、思わず「そんなバカな!」と叫びたくなる、異色作家カーシュの奇想とねじれたユーモアにみちた傑作集。 |
8.吸血鬼
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『吸血鬼 恐怖と怪奇名作集8』岩崎書店、1999年 独立戦争当時のしきたりがいまだに残っている、由緒のふるい部落、ヘンショー郡では、黒いマントに白い顔の悪魔が岩の割れ目から飛びだして、コウモリに化けるという吸血鬼のうわさが信じられていました…。ヘンリー・カットナーの表題作「吸血鬼」のほかに、クロスの「ガラスの眼」、ジャコビの「黒い告知」の2編を収録。 |
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8-1.ヘンリー・カットナー「吸血鬼」 収録本「ヘンショーの吸血鬼」、『怪奇と幻想 吸血鬼と魔女』角川文庫、1975年 |
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8-2.ジョン・K・クロス「ガラスの目」 収録本「顔」、『怪奇と幻想3 残酷なファンタジー』角川文庫、1977年 |
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8-3.カール・ジャコビ「黒の告知」 収録本「黒の啓示」、『吸血鬼伝説 ドラキュラの末裔たち』原書房、1997年 怪奇小説の常連作家、創生期のSF界の有力作家らによる、怪奇性・モンスター性を重視した吸血鬼小説の傑作15編を収めたアンソロジー。ホラーとして、ブラックユーモアとして繰り広げられる吸血鬼たちの饗宴。 |
9.死のなかばに
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『死のなかばに 恐怖と怪奇名作集9』岩崎書店、1999年 ある本を書くために、わたしは、ニューヨークのうらさびれた町に、一軒の家をかりました。ところが、800年に建てられた、その古い家の庭に、夜な夜な、よぼよぼの老婆があらわれて、花壇をみつめるのです…。ベン・ヘクトの表題作のほかに、ブラックウッドの「ランニング・ウルフ」、フォースターの「天の乗合馬車」の二編を収録。 |
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9-1. アルジャーノン・ブラックウッド「ランニング・ウルフ」 収録本「メディシン湖の狼」、『イギリス怪奇幻想集』現代教養文庫、1998年 レ・ファニュ、ブラックウッド、アン・ブリッジなど7人の作家によるクラシックな怪奇・幻想傑作物語集。 |
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9-2.ベン・ヘクト「死のなかばに」 収録本「死の半途に」、『アメリカ怪談集』河出文庫、2019年 「新天地」である北米にはヨーロッパやアジアにはない怪異と恐怖が渦巻いていた。荒俣宏が「アメリカ文化の底を流れる怪異」の本質をあきらかにすべく精選したホーソーン、ポオ、ラヴクラフト、ビアス、ブラッドベリなどの十三の物語による究極のアンソロジー。開拓時代の名残をとどめる奇譚、都市における精神の崩壊譚など多彩な作品群がアメリカの暗部をあきらかにする。 |
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9-3.E・M・フォースター「天の乗合馬車」 |
10.けむりのお化け
KEYBOOK 矢野浩三郎編著『けむりのお化け 恐怖と怪奇名作集10』岩崎書店、1999年 満員電車から外をながめていたとき、ランは、ザラザラしたコンクリート屋根の上に、ぶかっこうな黒い袋みたいなものがころがっているのに気づきました。それが、後にひどい目に会う怪物との最初の出会いでした…。フリッツ・ライバーの表題作「けむりのお化け」のほかに、クランの「怪物」、グルーバーの「十三階の女」の二編を収録。 |
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10-1.フランク・グルーバー「十三階の女」 収録本「同」、『怪奇と幻想 超自然と怪物』角川文庫、1975年
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10-2.ジェラール・クラン「怪物」 異形であるがゆえに、残酷に排除されねばならない怪獣たち。八俣の大蛇からゴジラへ、怪獣文学のオンパレード。「巨人」「鵺」「キングコング」など、27編を収録。 |
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10-3.フリッツ・ライバー「けむりのお化け」 収録本「煙のお化け」、『続世界怪奇ミステリ傑作選―“13"のショック』イフ・ノベルズ、1977年 |