文春文庫「心をつなぐ、本がつなぐ。」2021年【20冊+おまけ20冊】

瀬尾まいこ原作、映画『そして、バトンは渡された』とのタイアップ企画「心をつなぐ、本がつなぐ。」、文春文庫による40冊のセレクションです。2『絶望スクール』、わたし日本語学校の裏を少しだけ知っており、技能実習制度は政官財の典型的な癒着だと思ったり思わなかったり。3『強運の持ち主』、東日本大震災について書いたノンフィクション『津波の霊たち』のなかで、占い師の助言によって日常を取り戻してゆく、子供を喪った親の姿が描かれていました。かならずしも合理だけがひとを救うわけではないんですね。15『星の王子さま』、あちこちの出版社から発売されているこちら、文春版は倉橋由美子さんが翻訳しているんですね(『倉橋由美子の怪奇掌篇』)。

 

出会いをつなぐ

かばん屋の相続 (文春文庫)

文庫オリジナル短編集

1.池井戸潤かばん屋の相続

池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに?表題作他五編収録。

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絶望スクール 池袋ウエストゲートパーク15 (文春文庫)

シリーズ累計600万部

2.石田衣良絶望スクール

あの子を「この国」に失望させない! アジアからの留学生であふれる北口の日本語学校。アルバイト、住居、寝具まで斡旋する学校は、若者たちの夢を搾取するだけなのか? 借金を背負い日本へと渡ったベトナム人少女を絶望させる悪徳スクール。その闇をマコトとタカシが暴く! (表題作) ほかに、「目白キャットキラー」「西池袋ドリンクドライバー」「要町ホームベース」の3篇を収録。時代を鋭く描き出す人気シリーズの第15弾。

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強運の持ち主 (文春文庫)

祝! 本屋大賞受賞

3.瀬尾まいこ強運の持ち主

元OLが営業の仕事で鍛えた話術を活かし、ルイーズ吉田という名前の占い師に転身。ショッピングセンターの片隅で、悩みを抱える人の背中を押す。父と母のどちらを選ぶべき?という小学生男子や、占いが何度外れても訪れる女子高生、物事のおしまいが見えるという青年…。じんわり優しく温かい著者の世界が詰まった一冊。

あわせてオススメ『そして、バトンは渡された

サロメ (文春文庫)

傑作長編

4.原田マハサロメ

退廃に彩られた十九世紀末のロンドン。病弱な青年だったビアズリーはイギリスの代表的作家で男色家のワイルドに見いだされ、『サロメ』の挿絵で一躍有名画家になった。二人の禁断の関係はビアズリーの姉やワイルドの同性の恋人を巻き込み、四つ巴の愛憎関係に…。美術史の驚くべき謎に迫る傑作長編ミステリー。

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表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 (文春文庫)

累計20万部

5.若林正恭表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

前作『社会人大学人見知り学部卒業見込』から約4年ぶり、新作の舞台はキューバ!航空券予約サイトで見つけた、たった1席の空席。何者かに背中を押されたかのように2016年夏、ひとりキューバへと旅立った。慣れない葉巻をくわえ、芸人としてカストロの演説に想いを馳せる。キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない。若林節を堪能できる新作オール書き下ろし!

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涙をつなぐ

獅子吼 (文春文庫)

吉川晃司激賞

6.浅田次郎獅子吼

「けっして瞋るな。瞋れば命を失う」父の訓えを守り、檻の中で運命を受け入れて暮らす彼が、太平洋戦争下の過酷に苦しむ人間たちを前に掟を破る時―それぞれの哀切と尊厳が胸に迫る表題作ほか、昭和四十年の日帰りスキー旅行を描く「帰り道」、学徒将校が満洲で奇妙な軍人に出会う「流離人」など華と涙の王道六編。

あわせてオススメ『姫椿

午前三時のルースター (文春文庫)

サントリーミステリー大賞受賞

7.垣根涼介午前三時のルースター

旅行代理店に勤務する長瀬は、得意先の中西社長に孫の慎一郎のベトナム行きに付き添ってほしいという依頼を受ける。慎一郎の本当の目的は、家族に内緒で、失踪した父親の消息を尋ねることだった。現地の娼婦・メイや運転手・ビエンと共に父親を探す一行を何者かが妨害する…最後に辿りついた切ない真実とは。

あわせてオススメ『ヒート アイランド

対岸の彼女 (文春文庫)

第132回直木賞受賞

8.角田光代対岸の彼女

専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが…。結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、それだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編。

あわせてオススメ『空中庭園

その日のまえに (文春文庫)

累計77万部

9.重松清その日のまえに

僕たちは「その日」に向かって生きてきた―。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか…。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。

あわせてオススメ『カカシの夏休み

出会いなおし (文春文庫)

中江有里推薦

10.森絵都出会いなおし

イラストレーターの時子は、かつて共に仕事をした編集者のナリキヨさんから、仕事の依頼をふたたび受ける。年を重ねて時子が得た感慨とは(「出会いなおし」)。ほろ苦い思い出のある小学校の同窓会に出て知る、意外な事実(「むすびめ」)。人々の出会いと別れ、そして再会を描く珠玉の六篇をおさめた短篇集。

あわせてオススメ『カラフル

 

希望をつなぐ

旅をする木 (文春文庫)

没後25年永遠の名著

11.星野道夫旅をする木

広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカ。1978年に初めて降り立った時から、その美しくも厳しい自然と動物たちの生き様を写真に撮る日々。その中で出会ったアラスカ先住民族の人々や開拓時代にやってきた白人たちの生と死が隣り合わせの生活を、静かでかつ味わい深い言葉で綴る33篇を収録。

あわせてオススメ『長い旅の途上

そして生活はつづく (文春文庫)

祝!結婚

12.星野源そして生活はつづく

携帯電話の料金を払い忘れても、部屋が荒れ放題でも、人付き合いが苦手でも、誰にでも朝日は昇り、何があっても生活はつづいていく。ならば、そんな素晴らしくない日常を、つまらない生活をおもしろがろう。音楽家で俳優の星野源、初めてのエッセイ集。巻末に俳優・きたろうとの文庫版特別対談「く…そして生活はつづく」も収録。

あわせてオススメ『働く男

コンビニ人間 (文春文庫)

第155回芥川賞受賞

13.村田沙耶香コンビニ人間

36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。「いらっしゃいませー!!」お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。世界各国でベストセラーの話題の書。

あわせてオススメ『きれいなシワの作り方

あしたの君へ (文春文庫)

累計12万部

14.柚月裕子あしたの君へ

家庭裁判所調査官補として研修の間、九州の福森家裁に配属された望月大地。そこでは窃盗を犯した少女、ストーカー事案で逮捕された高校生や親権を争う夫婦とその息子など、心を開かない相談者たちを相手に、懊悩する日々を送ることに…。大地はそれぞれの真実に辿り着き、一人前の家裁調査官となれるのか!?

あわせてオススメ「泣く猫(『猫が見ていた』所収)

星の王子さま (文春文庫)

世界の名作

15.サン=テグジュペリ星の王子さま

「ねえ、お願い…羊の絵を描いて」不時着した砂漠で私に声をかけてきたのは、別の星からやってきた王子さまだった。王子さまとやりとりを重ねるうちに、私の胸に去来したものとは―。作家・倉橋由美子による誉れ高い名訳が、美しい装丁と共に甦る。1943年の刊行以来、世界中を魅了し続けている名作。

あわせてオススメ『アンネの日記アンネ・フランク)』

 

運命をつなぐ

死神の精度 (文春文庫)

シリーズ累計150万部

16.伊坂幸太郎死神の精度

CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。

あわせてオススメ『死神の浮力

赤い砂 (文春文庫)

いきなり文庫!

17.伊岡瞬『赤い砂

男が電車に飛び込んだ。現場検証を担当した鑑識係・工藤は、同僚の拳銃を奪い自らを撃った。電車の運転士も自殺。そして、拳銃を奪われた警察官も飛び降りる。工藤の親友の刑事・永瀬遼が事件の真相を追う中、大手製薬会社に脅迫状が届く。「赤い砂を償え」―自殺はなぜ連鎖するのか?現代を映し出した、書き下ろし傑作!

あわせてオススメ『祈り

木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫)

累計50万部

18.恩田陸木洩れ日に泳ぐ魚

舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿―共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編。

あわせてオススメ『まひるの月を追いかけて

炎環

第52回直木賞受賞

19.永井路子炎環

京の権力を前に圧迫され続けてきた東国に、ひとつの灯がともった。源頼朝の挙兵に始まるそれは、またたくうちに、関東の野をおおったのである。鎌倉幕府の成立、武士の台頭―その裏には彼らの死に物狂いの情熱と野望が激しく燃えさかっていた。鎌倉武士の生きざまを見事に浮き彫りにした傑作歴史小説直木賞受賞作。

あわせてオススメ『北条政子

花の鎖 (文春文庫)

累計80万部

20.湊かなえ花の鎖

両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繋いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男「K」の正体とは。驚きのラストが胸を打つ、感動の傑作ミステリ。

あわせてオススメ『望郷