岩波書店他「書物復権 11出版社共同復刊25」2021年【43冊】
復刊ドットコム上で行われたリクエストに基づく、11出版社による復刊43冊です。小説やエッセイなどは、フェアも頻繁に行われていますし、ネット上の口コミから人気のバロメーターが把握しやすい。それに対して教養書は、読むひとがどうしても限られてくるので情報の流通量が少ないうえに、古典ならまだしも、比較的新しめのものになるとどれを読むべきかがまったく見えてきません。そうした環境下で、この「書物復権」はたいへん重宝します。自分の知らなかった本が目白押しのうえ、それぞれの出版社が自信をもってレコメンドしているのですから折り紙つきというわけです。読むスピードを競うよりも、ノートを用意し、1冊を1年くらいかけてじっくり読み進めていくのがオススメです(出版社泣かせかも知れませんがw)。
哲学・思想・言語・宗教
1.エーリッヒ・フロム『希望の革命』紀伊國屋書店、1970年 機械化、大量生産、大量消費…感情を蝕む現代社会の病理を鋭く分析、人間が主体性を取り戻すための「行動提起」の書。 |
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私たちを聖者に近づけるのは、最深部に眠る涙の目覚めである──暗黒の詩情にみちた暴力的文体で文明の虚妄を告発する特異なエッセイストが祖国を離れた年に記した、思想の原点。 シオランの著作に近づくものが発見するのは、〈シオラン効果〉というものであり、文章を通して私たちを書物を越えたひとつの冒険のなかに引きずりこむ彼のもって生まれた才能である。(序文より) |
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3.J・L・オースティン『オースティン哲学論文集』勁草書房、1991年 言語行為論の創始者として知られるオースティン。彼の言語行為論のほか、意味、他我、真理などの問題を解明。彼の哲学の集大成といえる書。 |
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聖人にもエゴイストにも徹しきれない私たちが共に生きていくための可能性としての連帯。異なる環境や立場に置かれた人々が納得できるルールと社会をどう構築すればいいのか。そのひとつの答えがここにある。 |
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5.ロッセル・ホーブ・ロビンズ『悪魔学大全』青土社、1997年 サバト、悪魔の契約、夢魔、淫魔、吸血鬼、狼男、悪魔祓い、ポルターガイスト、異端審問、火刑など、中世から近代にいたる悪魔学の主要な文献をくまなく渉猟し、西欧の恥部ともいわれる魔女裁判の全景を浮き彫りにして、質量ともに空前絶後といわれる、悪魔学の最も権威ある事典。 |
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日本語の起源を弥生時代とする従来の説を排し、その濫觴を縄文時代に求めた本書は、“日本語の誕生”のみならず、いわゆる上代特殊仮名遣い、連濁・四つ仮名現象、アクセントの発生、方言分布など、日本語学における難問をここに解き明かした。記念碑的労作。 |
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宗教の本質にある“聖なるもの”とは何か。宗教を通じて“人間”を理解しようとした宗教学者ルードルフ・オットーの古典的名著が読みやすく新登場! |
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8.関根清三『旧約における超越と象徴』東京大学出版会、1994年 象徴としての旧約テクストの解釈を通して、超越の顕現する時処を問う。神がいつ、どこに現われるかの象徴分析から、代贖思想の成立にいたる旧約思想を解明。ヘブライ語原典の本文批判に出発し、その倫理学的な根拠づけを試みる。英訳によって国際的評価も高い初版をめぐる、国内外の論評22篇を参看しつつ、ダイナミックな応答と考察を展開した「増補版研究ノート」を追補。 |
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プロレタリアの夜をミシシッピ・デルタとニューヨークの夜に直結させ、音楽を国家から防衛し、文化と闘わせる「政治と美学」の出会い。才能でも歴史でもなく普遍的知性が反乱の「音楽=言葉」を生む。 |
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10.F・ガタリ『精神分析と横断性』法政大学出版局、1994年 ドゥルーズ = ガタリの思想的源流。精神分析界の異端児ガタリの思想遍歴の書,先鋭かつ独創的な思考の結晶。各論考の意義を明確に位置づけたドゥルーズの序文を付す。 |
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11.J・ボードリヤール『物の体系』法政大学出版局、2008年 《記号としての物》という,物の見方についての根本的な転換を行ない,記号として物を消費している現代社会の構造を鋭く分析。その特異な思考の基点を示す処女作。 |
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12.R・ジラール『欲望の現象学』法政大学出版局、2010年 主体・対象・媒体という〈欲望の三角形的構造〉を手がかりに,セルバンテス,スタンダール,プルースト,ドストイェフスキーらの作品を縦横に分析して,欲望の増殖・病いの果てのロマネスク的結末に,死と呪縛からの解放,回心,始まり,創造のダイナミズムを探り当てる。 |
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13.H・パトナム『事実/価値二分法の崩壊』法政大学出版局、2011年 大衆文化や哲学思想・社会科学などにおいて、歴史的にさまざまな形で展開され擁護されてきた「事実/価値二分法」に対して論争を挑むパトナム哲学の批判的考察。その「事実認識は客観的でありうるが、価値判断は主観的である」という根底的思想をD.ヒュームに始まりカント、デューイ、A.セン、ハーバーマスらを検証して斬新かつ独創的反論を提示し、問題の把握と理解に導く。 |
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14.モーリス・メロル=ポンティ『ヒューマニズムとテロル』みすず書房、2002年 自由主義陣営と暴力的な共産主義という図式が流布していた1947年に書かれた本書は、ベルリンの壁とソ連崩壊後に生きるわれわれに何を投げかけてくるのだろうか? 批判的考察の対象とされているのは、1940年代に書かれたケストラーの作品、そして1938年のモスクワ裁判である。今では遠ざかってしまった時代のこうした事柄をとりあげた本書を、しかし一貫して流れているのは「暴力とは何か」という、まさに今日的な問題である。 |
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15.ハンナ・アーレント『アウグスティヌスの愛の概念』みすず書房、2002年 「隣人が世界内に存在するのは、決して偶然として理解されてはならない」―社会のきずなの存在論的根拠を問うた、アーレント政治哲学の出発点。 |
社会
家族や母親に子育ての責任が負わされる状況は、歴史のなかでどのようにして形成されてきたのか。近代の家族規範のもとで、女・男・子どもはいかに生きてきたのか。現代の家族や子育ての規範を改めて問い直す注目の一冊。 |
歴史・民俗
1.高岡裕之『総力戦体制と「福祉国家」』岩波書店、2011年 「福祉国家」日本のルーツは本当に戦時期にあるのだろうか―従来、軍もしくは戦争の要請に基づくものとされてきた厚生省設立や国民健康保険・厚生年金保険制度創設などの「戦時社会政策」。本書は、その形成過程における政府や地方、軍部などのせめぎあいに着目し、戦後日本の福祉国家とは全く異なる「骨格」を持つ、戦時期の総力戦体制=「福祉国家」の姿を浮かび上がらせる。 |
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20世紀の歴史学が生み出したまぎれもない古典。プロックは深い学識を背景に比較史の方法を駆使し、「封建社会」の全体史を人間の心性とともに再現する。日本のフランス中世史研究の蓄積を傾注した待望久しい新訳。 |
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3.F・ディレイニー『ケルトの神話・伝説』創元社、2000年 螺旋的再生の構造が映しだすケルトの世界と夢と愛のかたち。 |
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4.M・サーリンズ『石器時代の経済学』法政大学出版局、2012年 未開社会の狩猟・採集に関する豊富なデータを駆使して、「始原のあふれる社会」を実証的に描き、「飢えと過重労働」だけを見る旧来の未開社会観を根底から覆す。あわせて、生産‐労働とは何かを問い直し、未開交換の相互性と外交術などの考察の上に、人類生存のための経済活動の理論を提示する。 |
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5.カルロ・ギンズブルグ『チーズとうじ虫』みすず書房、1984年 「私が考え信じるところでは、すべてはカオスである、すなわち土、空気、水、火のすべてが渾然一体となったものである。この全体は次第に塊になっていった。ちょうど牛乳からチーズができるように。そしてチーズの塊からうじ虫が湧き出るように天使たちが出現したのだ」 |
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6.中野目徹『明治の青年とナショナリズム』吉川弘文館、2014年 明治中期、欧化主義の風潮に対抗して活動を開始した政教社と日本新聞社は、しだいに関係を深めて一体化した。その中心メンバーであった志賀重昂や三宅雪嶺、鈴木虎雄や陸羯南ら青年たちの思想と行動を丹念に読み解く。「日本」「日本人」とは何か、国家や民族のために何をなすべきかを模索した彼らの声に耳を傾け、近代日本のナショナリズム像を描く。 |
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唐を模範とした日本の律令制は、官僚機構から女性を制度上“排除”する一方、重要政務を課し、行政運営のなかに“包摂”した。この矛盾したシステムのもと、女官が得た公的地位とはいかなるものだったのか。令制前の男女共労体制の踏襲から平安期の制度変容による女房登場まで、古代女官の実態を追究。律令国家を支えた女性の政治的役割に迫る。 |
心理・教育
1.A・サミュエルズ他『ユング心理学辞典』創元社、1993年 ユング心理学の用語を解説した初の辞典。基本用語の他に、ポスト・ユンギアンとの連関、精神分析用語をも含めて256の項目を、的確・精緻かつ批判的に解説した画期的な辞典。研究者の必携書。 |
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2.シーモア・パパート『マインドストーム』未来社、1982年 「ロゴ」の生みの親パパート博士が語る「ロゴ」言語の世界。新しい知識との関係づくりに向け、コンピューターがどのように人々の助けとなるか。コンピューターと未来と教育を語る。 |
文学・芸術
さて今や、フーコーの言葉づかいを借りて分析されるべき、もうひとつの監禁制度―美術館―および科学―美術史―が存在する。それらは、われわれが近代芸術という名で知っている言説を可能にする前提条件なのである。モダニティの意味と解体を探り、ポスト・モダンのゆくえを示す。 |
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絵の見方、美術の歴史を「父の機能」の一党支配から解放する戦略とは?無意識のイデオロギーを相対化し、主体、トラウマ、メディウムと皮膚、見る・触れる、メタファー/メトニミー等の観点から試行する。 |
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DTPや電子媒体、SNSの普及により、グーテンベルク以来の出版革命期を迎えた現代に、言葉を正し、整えるという校正の仕事はどうあるべきか。誰もが情報発信できる時代にこそ求められる校正の方法論を、古今東西の出版校正史をひもとき、長年の実務経験と共に解き明かす。日々言葉と向き合う出版人へ、そして言葉と本を愛する人へ贈る、技法解説を超えた包括的校正論。 |
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4.ウラディミール・ジャンケレヴィッチ『ラヴェル』白水社、1970年 |
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5.サガン他『罠/ボーイング=ボーイング』白水社、1966年 サガン「スエーデンの城」、カモレッティ「ボーイング=ボーイング」、トマ「罠」、ルッサン「終わりなき愛」の傑作戯曲4作品を収録。 |
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語りえないものを語ろうとする主人公ワットの精神の破綻を、複雑な語りの構造を用いて示した現代文学の奇作。 |
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7.ヴァージニア・ウルフ『病むことについて』みすず書房、2002年 『灯台へ』『ダロウェイ夫人』『波』を執筆した小説家ヴァージニア・ウルフは、同時に幅広い分野に及ぶエッセイを生涯書きつづけた評論家でもあった。インフルエンザにかかったときの心象を描く表題作ほか、書評の役割、ジャンルの特質を追求した伝記論、父の思い出から『源氏物語』評まで。アイロニーとユーモアに充ちたエッセイ・短編、全16篇。 |
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古事記を言葉において、作品として根源的に読み直し、「合理派」的思想偏重と「浪漫派」的情念偏重から古事記を解放し、研究の方法的転換を探った労作。 |
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「私はハムレットだった。ヨーロッパの廃墟を背にして、ああだこうだ(ブラブラ)と喋っていた。」 現在世界で最も注目を集める劇作家、ハイナー・ミュラーのテクスト集。 |
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法律・経済・政治
民主的な権威概念の可能性を軸に、自由と権利の根底にある公的かつパーソナルなものを開示する。自由、権利、公正、道徳など、錯綜する諸価値をどのように秩序づけるか。ロールズ、ドゥオーキンらによって提起されたこれらの問を射程に、より根源的なアプローチを試みる。 |
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2.西尾隆『日本森林行政史の研究』東京大学出版会、1988年 明治維新期から戦後改革にいたる森林行政の史的展開を、公共政策と行政官庁との間に働く相互作用という視点から考察した先駆的研究。「補論 明日の森林ガバナンスに向けて」を収録。 |
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3.樋口亮介『法人処罰と刑法理論』東京大学出版会、2009年 独占禁止法違反などの経済犯罪を中心として、企業活動から生じる問題が大きな課題となる時代状況を背景に、1990年代以降、法人処罰の在り方が盛んに論じられている。本書は、法人処罰をめぐる議論を比較法的知見を踏まえて理論的に検討し、刑法理論上での位置づけを明らかにするとともに、その具体的要件を構築する。「法人処罰の系譜的考察」(2009年発表)を補論として加え、待望の復刊。 |
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台湾はどこから来て、どこへ行くのか? アジアの要衝として日・米・中のあいだで揺れ続けた歴史を振り返り、さらに2008年総統選を踏まえて未来の方向性をも指し示す。「中華民国台湾化」の視角から、自らのアイデンティティと政治主体の変化に着目して構造変動を描いた通史の決定版。「「中華民国在台湾」から「中華民国台湾」へ――中国の影響力メカニズムと中華民国台湾化の現在」を補論として増補する。 |
自然科学・医学
ガウスは自然現象からいかに豊かな数学的法則を導きえたのか。確率論、天文学、測地学などの分野で先導的役割を果たしてきた、ガウス誤差論を初集成。 |
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2.ケネス・フランプトン『現代建築史』青土社、2003年 アドラー、サリヴァンからヴァン・ド・ヴェルド、ル・コルビュジエ、ミース、そして安藤忠雄まで。近~現代建築の巨匠・様式・技法・実践を、広汎かつ周到に掘り下げ、「構築性」「批判的地域主義」などの観点から、建築におけるモダニズムの思考と展開に迫る、建築史の重要基本書。 |
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3.イーヴァル・エクランド『偶然とは何か』創元社、2006年 サイコロ、量子力学、神の存在証明、不完全性定理、スリーマイル原発事故、金融オプション…これらに共通する性質とは?「偶然」の多面性を様々な角度から明らかにする。 |
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野に伏して馬を待つ――北海道、カナダ、ケニヤ、そしてインドのフィールドへ……周縁に生きる馬たちに魅せられ世界を彷徨う女性研究者が描く馬と人間をめぐる動物記。野に放たれた再野生馬、サバンナに群れるシマウマ、幻のロバ「アドベスラ」など、魅力あふれる馬たちの息づかいとフィールドの情景を鮮やかに描写する。あらたに「補章 [インド]ヒマラヤの牧畜民と野生ロバ――牧者は共生の野を渡る」を増補する。 |